マガジンのカバー画像

人生はE♭

6
90年代に「美容と経営」に連載していた、パラボラ・エッセイ「人生はE♭」と題した貴重なコラムを掲載。
運営しているクリエイター

#関口和之

ロンドン・リバプール・東京

 先日”ニューヨークロンドン18日間遊び放題”という旅行を、ひとりで勝手に企画して出かけた。ほとんど根拠はないが、年に一度くらいそういうことをしないと、心に余裕が持てなくなる、とひとりで勝手に思い込んでいるわけだ。  ロンドンは初めてだったけれど、とても馴じみやすい街に思われた。人間も親切で、きめ細かい感じがする。”都会”というのはきっと、こういう街のことをいうのだろう。”都会”というものの果たす役割が、いくつかあるとしたら、ロンドンはそのすべての性格を備えている、とい

初めて観るタカラヅカ

 いつも日比谷に映画を観に行くたび、どうにも気になってしかたなかったものがあった。それは「みゆき座」の向かい「日生劇場」の裏手に位置する、あの「宝塚劇場」だった。  あでやかな看板もさることながら、まわりにたむろする女の子たちの数にいつも驚いてしまう。  その集団はほぼ100パーセント女性で構成されている。おおむね眼が一種異様に輝いている。公演前はもちろんのこと公演後も、お目当てのスターが出て来るのを待ちかまえているのだろうか、劇場前をとり囲んだまま去ろうとしない。  た

東京の季節感、田園調布のタケノコ

 世の中に正しい食べ方、というものなどない。カレーライスに醤油をかけようが、ちくわにアンコをつめようが、納豆にクリームチーズを盛ろうが、それは個人の趣味というものだ。  しかし、人間らしい食べ方というものがあるとしたら、それは旬のものをいただく、ということに違いない。  自然は、その季節に合ったおいしい物を地に実らせている。人間はそれを食べさせてもらっているわけだ。  だからおいしいのは当然といえば当然のこと。しかもそういった食べ物が季節感をいやがうえにもかきたててくれ

ハワイアンの残留孤児、ウクレレのこと

 僕がまだほんとうに小さかった頃に、どうやらハワイアン(つまりハワイの音楽)のブームはあったらしい。  残念ながら、記憶の中にその心あたりはない。まして、1990年の今日や、街を歩きながらハワイアンを口ずさんでいる人に出くわすこともないだろう。  しかし、ブームの痕跡は意外な所に残っているものだ。それは大学の軽音楽部においてである。僕が大学に入った頃には、まだ「〇〇大学ハワイアン研究会」とか「〇〇大学ハワイアンズ」といった具合に、実質はロックやポップスのサークルにもか