記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ドクターストレンジ2 マルチバース・オブ・マッドネスを見たネタバレありの酷評。

「DOCTOR STRANGE WILL RETURN(もう一回、撮り直します)」

と読み間違えるくらい、エンドクレジットを怒りと失意の中で見届けた公開日初回の池袋グラシネIMAX3D。ガチファン達に囲まれ、パンフレットもMoMとワンダビジョンの2冊を購入して子供のようにワクワクしてみ始めたのに、中盤からはため息と苦笑いの連続でした。「こりゃあネットで荒れるぞ〜…」と思いきや、検索してもしてもしても絶賛ばかり。では、と久しぶりにnote.を執筆します。

功夫と中国神話をマーベルの世界にスムーズに取り込んだシャン・チー、世界の神々のモチーフにすらなる10人も実は会社員だったエターナルズ、そしてインフィニティーウォー/エンドゲームに並ぶ(勝る?)傑作だったスパイダーマンNWH。MCUはエイジオブウルトロンから常に期待値を超えてきました。
NWHからマルチバースを理由に過去作がどんな使われ方をするかわらない、とアイアンマン1から見直して臨んだドクスト2。ですが結果…まさか全てを下回る展開とは…。

単なる好き嫌いというより違和感に近かったので、その点を書いてみますがその前に、まずは良かった点から。ネタバレMAXです。

  • 夢はマルチバース説

とても面白いアイデア!
今後夢はあり得た俺として認識します!

  • 前半のワンダの孤独描写

ワンダビジョンのシットコムパートの音楽に乗せて映される幸せな家族。しかし、目を覚ますと広いベッドに1人ぼっちのワンダ…。この一瞬で孤独を演出したシーンが映画内で1番ドキっとしたかも。

  • NYでの闘い

スムーズに結婚式参列者から魔術師にへと移行するストレンジと、突如現れたウォンの今までに無い武器格闘と魔法を駆使した戦い方は本当にカッコよかった!

  • アメリカ・チャベス

”マルチバースを行き来できるキャラ”に突然登場されても今回だけの浅いキャラにならないか…と不安だったけど、その能力を得るまでの部分でした。悲鳴役。単純に見た目が可愛いのに、セクシーさすら漂うスキニージーンズは眼福。腕しか使えてないパンチのフォームに改善の余地あり。

  • テンポの良さ

はじめっからトップギア!いい意味で2時間とは思えないくらい展開に富んでいた!

  • 物語の結末

アイアンマンを筆頭にマーベルお得意の、トラブルを自分で作って自分で解決する一人相撲型ストーリー。と言ったら意地悪かもしれないけど、考えを改める過程こそ人間としての成長を重ねて観れるので好きな展開です。(それだけに最後のシーンは悔やまれるのですが)

以下、少しスペースを空けてから酷評です。
楽しめた方には水を差してしまって悪いので、興奮が落ち着いてから読んでください!







  • ホラー演出がダサい

驚かせ方がオマージュを超えて、最早コメディ。全部先が読める上に雑。印象的だったのは、ワンダのゾンビ歩き。いや、ストレンジの音符バトルか。モルド対ストレンジが取っ組み合いのガチムチバトルなのも驚いた。手錠が魔術を無効化してたとしても、モルドは使えたのでは。落ちる!危ない!落ちた〜と思ったら3mくらいだったりして鼻で笑ったり。この点は思い出せないほどあります。

  • 音符でバトル

やっぱり許せないのは音符を魔法で飛ばしてバトル。トラウマですわ。もはや、パズルでドラゴンを攻略するくらい子供向けファンタジー。ドクターストレンジのリズムゲーが存在していたならオマージュとして目をつぶってやれたかもしれない。音符で戦うシーンを喜ぶような年齢の子供がこれを観るのか?目玉を串刺しして引き抜くようなシーンすらあったのに。

  • ゴーストバスターズ

似た理由で突然出てきた壺でゴーストバスターズよろしく悪霊退散するクリスティーン氏。昔のドタバタしたご都合主義的ホラーみたいでアホらしい。後から考えると悪霊自体、出てくる必然性は無い。ゾンビを遠隔操作してれば良かったのだ。しかも弱そうな悪霊にワンダが手こずってる様子もあり、「弱点か?」と思いきや勿論特に説明なくワンダが悪霊を一蹴して終わります。

  • ワンダにとってそんなに子供が大事なのか?

一番の疑問点であり映画の欠点。ワンダは双子を知らぬ間に授かって即日出産している。産後もあっという間に育ち、本人たちも驚いているシーンすらあった。そんな子供に愛着を持つ理由なんて観客にも無ければ、ワンダ本人にだって無いだろう。数週間飼った子犬みたいなもんだ。ワンダが本当に欲しいのはビジョンとの幸せな。双子はその為の飾り。死んだ妻に囚われるシャン・チー父みたいに、ワンダがビジョンに固執する話だったらまだ理解できただろう。ただ、それはワンダビジョンと同じ話なのだが…。

加えて母は子育ての為だけに生きる生物、とでも思ってそうな監督にも腹が立つ。ワンダというかスカーレット・ウィッチが子供達に受け入れられず正気を取り戻すシーンも遅すぎる。捨て犬が本来の飼い主のところに戻ったのに、その飼い主にカチ込みにいくようなものだ。この狂った魔女は、可哀想でも何でもない。思い入れのあるキャラを目の前で使い捨てられてる俺の方が可哀想。

百歩譲ってダークホールドに触れたからワンダが狂ったとしよう。
だとしてもワンダはビジョンよりも子供に固執するのか、やはり説明がつかない。
ワンダビジョンの最終回でもワンダの目を覚ましたのはビジョンによるものだ。エイジ・オブ・ウルトロンから7年かけてワンダが魅力的なキャラクターとして育ち、スカーレット・ウィッチとして闇の魔法も身につけた彼女が最強キャラとしていかにMUCの頂点に君臨する大事なキャラになると期待していたが、それが単なる狂った母として使い捨てられてしまった。サム・ライミ監督はワンダビジョンの最終回を観れずに制作スタートしているらしいが、そもそもドラマが終わって1年近く期間が空いてる。MCUの蓄積を無視した脚本家も悪い気がする。征服者カーンを登場させなかったのは情報過多になるから、と脚本家は答えていたが、カーンを出した方がまだ収束したのでは無いだろうか。スタッフロールを見ながら「こんなに多くの人が関わってて誰もこの映画を止められなかったのかぁ〜…」としか思えなかった。

  • 最悪の過去キャラ引用

巨匠のやりたい放題、ここに極まり。劇中、イルミナティとして過去のキャラを引っ張り出して、特に面白味もない殺され方をして消える。刃牙シリーズでは噛ませ役の倒され方に味があるから強さの表現になるのだ。綿毛のように吹いて飛ばされた彼らにはヒーローとしての説得力は無く、今後物語に絡むことは無い。最初からその予定はないとしても、NWHのように過去キャラを活かしたストーリーであってほしかった。
なのに、思い入れのある俳優達に別キャラとして登場してもらって一瞬でザコ扱いされても、全然震え上がらない。イルミナティがどれだけ強く、どんな人間なのかも一瞬しか語られないから、見たことある顔の知らんキャラが負けてるだけで、何も驚きがない。こんな雑な扱い、あり得るのだろうか。MCUの魅力の核心は、派手なアクションではなく、キャラクターの交差の妙ではなかろうか。モービアスで劇中登場しないスパイダーマンが予告編で映り込んでいたが、イルミナティの扱いはそれに近い。予告編で嬉々として考察する従順なファンを弄ぶための道具だ。ファンに対して愛のないストーリーに、徐々に腹が立った。あの中に推しキャラがいたらもっと怒り狂っていたと思う。サム・ライミはMCUも数本しか見てないらしい。時間が無かったのかもしれないが粗末すぎる。撮り直してほしいくらいだ。サムは原作のマーベルには詳しいかもしれないがこれはMCU。他の作品のように丁寧に他の作品からの物語のバトンを受け取り、驚きを持って次へと話を展開して欲しかった。例えば、シャン・チーは最後にウォンとカーマタージへ行くけど、それくらいは回収してほしかった。

  • スパイダーマンを悩ませたニューヨーク市民達の好奇の目、ストレンジには向かず。

丁寧さの欠如はここでも感じる。そもそもNWHの話の基盤は、ピーター・パーカーが人々に好奇の目に晒される事で悩み、ストレンジに人々の記憶を消してもらうよう頼むところから話が始まっている。なのにストレンジは堂々と街中でポータルやら第3の目を開くも、周りは交通事故を目撃した程度の反応しかしない。ストレンジをヒーローと認識していても、誰も言い寄ってこない。どうでも良い隙間にも気配りがされているMCUだが、この点が今作はガバガバだ。「まあ、細かいことはいっか」なんて雑なマインドで観続け、マルチバースが収束するストーリーになり苦々しくも納得しかけたのに、また最後の最後で別世界へポータルが開くし。勿論、ニューヨーク市民はバイクが派手にコケたくらいにしか驚かない。


総じて、期待していただけに本当に残念。やはり監督の意気込みが違うのだろうか。

気鋭の映画監督が、今までとは桁違いの責任をマーベルから任せるからこそ、人生を賭けた監督は作品に命懸けで取り組み、その結果としてMCUは素晴らしい作品の連なりになっているのかもしれない。監督自身が、突如として世界に名が知られることになるような力を授かるヒーローと自分を重ねてしまうのかもしれない。

その点、とても魅力的なキャラクターが、見飽きたような演出で、前に全く進まないストーリーで消費されてしまったことに落胆している。既に巨匠として知られるサム・ライミが、適当にMCUという素材で仕事をしただけのようにすら思えてしまう。ひたすらに残念だ。
今は何も手がつけられない。
こうして不満を書き綴ることしか…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?