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情熱と能力は掘り起こせる

激動する時代を乗り越えるために、
わたしたちは何をすべきなのか。

地域の課題は年々深刻になっています。
少子高齢化、人口減少、地域経済の縮小など…。
コロナによって観光客が
激減したと思えば、
かたや現在は一気に戻ってきたり。
そんな慌ただしい昨今の中、
地域に残る課題に対してどう向き合い
未来を創っていくのかが
求められていると思います。

私たちは、
持続可能な観光地経営
をしていくためには、
現場を動かす人を育てること
が大切だと考えています。

その一例として、
岐阜県の白川郷を事例に、
人材育成という観点から
地域との関わり方をご紹介します!

最初に見えた課題:
当事者の「問題意識」

弊社が数年におよび
深く根を張って活動してきた
岐阜県白川村、
通称白川郷での取り組みです。

いくつもの茅葺き屋根の
合掌造り家屋が並んでいる
その景観が美しく、
1995年に世界遺産に登録されて以降、
急激に知名度が上がりました。
人々を惹きつけた一方で、
インバウンド(訪日外国人旅行者)の影響で
2013年ごろからオーバーツーリズムによる
弊害が表れ始めてきたのです。

その象徴ともいえるのが
冬のライトアップイベント。

きらびやかなイルミネーションの裏で
会場までの道のりは大渋滞、
会場内はどこも大混雑、
違法駐車、
観光客同士による撮影場所の取り合い、
住民と観光客によるいざこざなど、
多くの問題がありました。

しかし、
当時の関連組織は
改善に向けて動くどころか
問題意識を持つこともなく、
どうしようもないこととして、
また当たり前に起こることとして
受け止めていました。
最初に立ちはだかった高い壁が
彼らの問題意識の低さだったのです。

私が白川郷に関わったのは、
当社の前身企業である旅ジョブからでした。
海外からの手配業務を担っており、
2016年にライトアップイベントを
ツアー行程に組み込み代理店に販売。
応募は予想以上の反響でした。

しかし、
現場の様子は想定外のもので、
身をもって体験したことが
オーバーツーリズムの実態、
その責任をたらい回しにする
当時の組織のあり方に
強い憤りを感じました。

そこで翌年、
まずは現場の実態をよりよく知るため、
英語・中国語など語学堪能な
25人のボランティア有志と共に
イベント運営に参加しました。
業務が終わり、
次回以降の改善点や課題を
リストアップして
実行委員会に提案したものの、
「実行する人がいない」
という壁にぶつかってしまいました。
更には、
変更には村民の合意形成が
必要ということで、
2018年も従来どおりのやり方で行う
という決断が下されてしまったのです。

予想もしていなかった意思決定に
私たちは愕然としました。
イベントを継続していくためには
変化する時代への柔軟な対応も必要であり、
変わらないことはリスクになるからです。

改革の軸は質への転換

本腰を入れて取り組み始めた2019年、
あるきっかけを契機に仕掛けを講じました。
きっかけとなったのは、
熱意ある職員が意思決定できる役職に
就任したことです。

それに便乗して、
私たちも住民の意識を変革する試み
を行いました。
その試みとは、
それまで当たり前となっていた
誰しもが参加できる
無料のイベントから有償化し、
完全予約制を導入
したことです。

そして、
量より質を極める意識改革を目指し、
「住民が自分たちで考えること、
行動につながるような
危機意識を持ってもらうこと」
を念頭に進めていきました。
この取り組みは奏功し、
これまでに類を見ない形で
イベントを成功させることができました。

そして、
イベントの成功をきっかけに
危機意識の芽生えた一部住民たちと
さまざまな議論を交わせるようになったのです。

村内で合掌造りの民宿を営む
当時69歳の鈴口悦子さんは、
合掌造りの本質的価値が
観光客に伝わっていないことに
もどかしさを感じ、
数より質を重視する
重要性と必要性を感じていました。

当事者である地域住民が
主体的に動くためには、
できるだけ早い段階で
観光地経営を設計していくことが大切です。
わたし自身、
地域にも掘り起こせば
能力があり情熱的な人材がいることを
身をもって気づきました。

"観光業界に人材が足りない"
といわれている所以は、
組織ありき、予算ありきで、
補助金や助成金に頼る構造から
抜け出せないことが多いからだと思います。
このような構造が変わらなければ、
有能な人材は今後も
地域や観光産業に集まりにくいでしょう。
これは全国に共通していえることですが、
今の行政や観光協会、
その延長組織のようなDMOが主導では、
新しいことや思い切ったことが
ほぼできるはずがないのです。
知識・知恵・実行力不足で
外部に丸投げしてコンサルティングに
お金が流れているだけだと考えています。

地域が限られた予算や資源を
有効に使い、成果を重ね、
持続可能な観光地経営を実現していくには、
結局はその地に携わる1人1人の
当事者意識にかかっています。
そこには住民だから、よそ者だから、
などは関係ありません。

意識を変えていくためには、
住民が主体的に取り組める施策が必要で、
住民不在のプランニングや
外部コンサルティングだけでは、
絵空事に終わるだけなんだと、
強く感じています。

1つの手段として、
危機意識と使命感を持った人材を
組織のトップに据えるという
世代交代も改革という意味ではありです。
もしくは、
行政に不向きな仕事は
地元や関係性のある民間企業に
早々に任せるのが賢明だと思います。

内側と外側の視点からアプローチ

NOFATEは現地伴走型
地域支援・マーケティングを行ってきました。
さまざまな形で
自分たちを取り巻く状況を俯瞰する視点、
すなわち大局観を持つ大切さを伝えつつ、
外部の視点を生かして
問題を正確に捉えながら
課題解決に向け
冷静かつ情熱的に施策を練ってきました。

その過程で、
調査結果の分析を
地域住民と共有し、対話を重ねることを
非常に大切にしています。
もちろん最初からうまくいっていたわけではありません。
悲しい想いも、
悔しい想いもして、
紆余曲折を経ながら
徐々に住民の共感を得てきました。

持続可能な観光地経営を行うためには、
サービスと利益を両立させる
地域ブランディングが必要だと考えています。
そのためにすべきことは、
内側から住民に当事者意識を持ってもらうアプローチと、
外側からしがらみや感情に縛られない人材が火付け役や汚れ役をこなすこと。
この2つが揃えば、
変化の多いこの時代でも
地域として価値を発揮こできるはずです。

NOFATEではこれからも、
地域の未来や人材を創っていきます。

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