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【3月の誕生石】幸せな結婚とサザンオールスターズとアクアマリン

「幸せな結婚」とは、恋する二人だけが願える特別な言葉だと勝手に思い込んできた。しかし今、自分の心を素直に照らしてみれば、結婚してから時が過ぎた自分もまた、若い二人と同じようにこの言葉に込められた意味を変わらずに願い続けていることに気付く。家族の健康、家庭で過ごす時間の充実、子供の頑張りと伸びやかな成長。家族と共に長い時間をかけて叶えるこれらの願いもまた、「結婚」の言葉の中に深く秘められていたことを、浅はかながらもアラフィフになり初めて理解したのだった。

このフレーズは3月の誕生石アクアマリンの石言葉でもある。アクアマリンは石の名前の通り海に縁の深い淡い水色の天然石で、優しい輝きと包容力に溢れ、持ち主に海に身を委ねるような深い癒しを与えてくれる石としても知られている。生涯のパートナーとして新たな一歩を踏み出す恋人たちはもちろん、大切な夫婦の時間を育む守護石として、結婚したカップルにも大変高い人気を誇る天然石でもある。

「幸せな結婚」とアクアマリンと聞いて、心にふと思い浮かんだ二人がいる。サザンオールスターズの桑田佳祐さんと原 由子さん夫妻だ。先日たまたま開いたNetflixで、サザンオールスターズが2023年に開催した茅ヶ崎ライブのドキュメンタリーを見たばかりだった。1982年に結婚されてから42年、公私共にパートナーであるお二人の息の合った歌声はライブでも健在。桑田さんが書く作品は男女の恋を歌い上げた、やや際どい歌詞も多いものの、バックに「アー♪アー♪」という原さんの穏やかなコーラスが重なると、不思議と歌に描かれた心の傷が癒されていく。傷心と優しさと郷愁が綯い交ぜになった苦くも甘いジンジャースープを飲んだように、歌の世界が胸にジンジンと沁み渡る。

桑田さんは茅ヶ崎に生まれ、中高時代は鎌倉の学校に通った。歌詞の中にも地元の茅ヶ崎や江ノ島、鎌倉を歌ったものが多い。200曲近くの楽曲をメロディを聞かずに歌詞だけをあらためて読み直してみたら、「TSUNAMI」「真夏の果実」「希望の轍」「忘れられたBIG WAVE」などなど、挙げたらきりのないほどの名作のほとんどが、湘南をはじめとする様々な海の情景と重なるものばかりなことに気付く。歌詞を読むだけで、桑田さんの胸に浮かぶ海の蜃気楼の中で、身を揺らすような気分になる。

東洋占星術を通しても、桑田さんの宿命をそっと覗いてみた。桑田さんご自身は水性の陰干の方で、世の中を自然の風景に例えるなら「春の雨」の役割を担う人だ。中でも特に「春水(シュンスイ)」と呼ばれるこの宿命の人は、万物が芽吹く季節に生命を生み育てる水の役割を持つことから、色恋沙汰と縁が深く、大変にモテる宿命である。また天から幸運が降り注ぐような守護神に恵まれた強い運をもつ一方で、とりわけ激しい動乱型の人生を歩むべき人でもあった。そもそもミュージシャンそのものが普通ではない=動乱型の世界にある職業なので、東洋占星術の視点で考えれば、最もふさわしい環境を選び取って活躍されてきたのではないかと思う。

さらに興味深かったのは、原 由子さんとの宿命の関係だ。原さんは水性の陽干を表す宿命の持ち主で、その役割はずばり冬の「海」である。ご夫婦が水性の表と裏、陰陽の関係にあり、その関係は兄弟のようにも見える。書かれた宿命をもっと詳しく見てみたら、桑田さんの宿命の配偶者を意味する場所に「海(原さん)」、原さんのそれに「雨(桑田さん)」が座っていた。こんな組み合わせはなかなかない。運命的な夫婦である。

宿命の全体を俯瞰してみても、お二人はその大半がなんと同じ質をもっている。それが占星術で意味するのは、たとえて言うなら宿命の中でも人生の同じ風景を、二人で一緒に眺めているようなものである。まさに"運命共同体"そのものだ。桑田さんと原さんは宿命の夫婦の関係であり、コインの表裏のように一体となった兄弟であり、同じ運命を背負った同志として、人生を共に歩んでこられたのではないかと想像する。

宿命に描かれた原さんの海は、太平洋と大西洋を合わせたような測り知れないほど壮大な海だ。清濁合わせ呑む「TSUNAMI」を巻き起こす海のようでもある。宿命のエネルギーも尋常ではなく、占星学上で見れば桑田さんを遥かに凌ぐ受容力とパワーを備えている。

鎌倉・由比ヶ浜の海岸から稲村ヶ崎を眺めて。サザンオールスターズの歌詞に触れると、湘南の海が桑田さんの創作活動にいかにインスピレーションを与えてきたのかを思い知る。占星術的に言うならば桑田さんの実気を育む母なる海だ。

思えば桑田さんの詞には「体を湿らす恋をして」(真夏の果実)「濡れたムードを買い占めて」(ミス・ブランニュー・デイ)など、水にまつわる言葉が散りばめられていることにもハッとさせられる。それが「春の雨」の宿命の桑田さんならではの世界なのだろうか。桑田さんが甘く切ない恋や愛を描いた歌詞で雨になって人の心を湿らす役割を持ち、悲しみも苦しみもすべて包み込む広大な海の宿命をもつ原さんが、ノスタルジー溢れる甘いコーラスで歌詞をBigウェーブで飲み込み、心の渚に打ち付ける。夫婦の幸せの形も様々である。湘南の海と縁深いサザンオールスターズが、こうした水性の役割をもつお二人によって支えられてきたことに、不思議な運命を感じてしまう。

3月の誕生石アクアマリンもまた、古くから船乗りたちのお守りとして愛されてきた海と縁の深い石でもある。透き通る海のような水色の煌めきで、この石もまた夫婦それぞれに違う幸せの形を明るく照らしていくのだろうか。ヨーロッパでは結婚や子宝の守護石としても崇められている。

幸せな結婚とサザンオールスターズとアクアマリンは、やっぱり海で繋がっていた。

誕生石の色を暮らしに取り入れて味わうのも、その月の幸運の気を引き寄せるようで楽しい。パリの老舗パティスリー「ラデュレ」で出会ったアクアマリン色のマカロンをおやつに。味はテ・マリーアントワネット。生まれ日に関係なく、「幸せな結婚」を願いながらアクアマリンのジュエリーを身につけるのもおすすめ。
キッチンの花もアクアマリン色のブルースターにして、幸せな気をインテリアにも取り入れて楽しむ。ブルースターもアクアマリンと同じく、幸せを呼ぶ花としてよく結婚式で用いられる。「結婚」で繋がる偶然の一致も。



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