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「勇気ある撤退」も必要〜2度の移住を挑戦できたワケとは〜

首都圏を離れて地方へ移住を望んでいる一方で、新しい地に馴染めるか不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。長野県松本市へ移住してきたとことこゆうきさん(以下、ゆうきさん)も移住する前まで同じような悩みをお持ちでした。

「地方移住は気負わずに、失敗したらまた戻ればいい」と語るゆうきさん。

ゆうきさんの移住を挑戦した経緯から失敗談まで、地方移住へ足踏みしている人へのヒントを伺いました。

〈とことこゆうきさんプロフィール〉
1979年、神奈川県生まれ。旅行や散歩が趣味で、2012年から出かけた場所をブログに書き続ける。2016年、2019年と2回にわたり長野県松本市へ移り住み、主に長野県内の情報や暮らしの様子を綴っている。ブログ:信州散歩+旅「笑っていこうよ!」


勢いで決めてしまった1度目の長野移住

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▲雄大な北アルプスを背景に、右側には国宝松本城


ーー長野県松本市を最初に訪れたのはいつですか。

7年前の2014年です。当時お付き合いしていた方(現在の妻)の出身地が松本でした。最初はただの旅行先として松本へ来たのですが、関東の山とは比較できないほどの雄大な山々に驚きました。

山には興味なかったのですが、雪が積もった北アルプスの風景に感動したことを覚えています。


ーー松本からだと北アルプスが一望ですよね。それから「移住する!」と決意したきっかけは何だったのですか。

元々、上京してきた彼女は関東で生涯を終えるつもりはなく、いずれは地元の松本に戻るつもりだったのです。遠距離恋愛をするなら自分が神奈川から移動した方がいいだろうと思い、2016年4月に勢いで移住しました。


ーーすごい勢いですね!新しい土地に移り住むことに不安はなかったのですか。

なんとかなるだろうと思っていました。国内の移住だし、生活はできるだろうって。しかし移住する勢いで、そのまま転職先も急いで決めてしまったのです。

松本市内の会社に半年ほど勤務しましたが会社に馴染めなくて、退職しました。転職活動を続けようとしましたが、資金調達も必要だったので、もう一度関東へ戻ることにしました。


移住失敗したのち、2度目の挑戦


ーー苦渋の決断でしたね。移住が思うようにうまくいかず、関東に戻るときはどんなお気持ちでしたか。

もう悔しかったですよ。友人にも「長野県へ移住する」と伝えていたので、まさか年内に戻るとは思いませんでした。

だから当時、“関東から長野へ移住する”のではなく、“転職したら長野へ住むことになった”と切り替えて考えることに。友人にも「移住失敗しちゃったよ〜」と笑って伝えました。すると「おかえり」と温かく迎えてくれて、気持ちが楽になりましたね。


ーー希望していた移住を失敗して、地元に戻る方もいらっしゃるんですね……。

そうですね。ブログでも移住失敗の経緯を詳しく載せていて、お悩みのコメントも寄せられています。その多くが「稼ぎ頭の主人が、職場の人間関係で苦戦しているので東京に戻ります」といった内容でしたね……。

わたしは移住先で溶け込めない経験をしたので、これまでの付き合いも大事にしようと感じています。移住を失敗しても心の励みになるのは、生まれ育った地元の友人ですから。


ーー2016年11月に松本を離れ、およそ2年。2019年1月に就職先を決めて再び長野に戻ってきたそうですが、最初から2度目の移住は心に決めていたのですか。

はい、一度関東で力を蓄えてから挑戦しようと当初から決めていました。転職に関しては、1回目と違いかなり慎重に進めましたね。

東京・銀座に拠点を置くアンテナショップ『銀座NAGANO』で、長野県の行政が運営している転職サービスを活用しました。

「40代手前」「未経験」「移住者」と転職するには難しい条件が揃うなか、県職員の方々が丁寧に相談に乗ってくれたおかげで、なんとか自分に合う企業が見つかったのでよかったです。

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▲「あのときは大変だったな〜」と振り返るゆうきさん


でも実は、2回目の移住も失敗したら関東に戻ろうと奥さんと決めていました。追い詰めるまで移住にこだわる必要はないし、「勇気ある撤退」が一番大事だと経験を通じて感じましたね。

今となっては松本の環境に慣れてきたので、3回目の移住はありえないですけれど(笑)。


移住先で見つけた新たな楽しみ

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ーー松本に再度移り住んで、およそ2年半年が経ちますね。前回の移住と比べて今の生活はどうですか。

仕事も暮らしも落ち着いてきたので、新たな趣味として家庭菜園を始めました。松本市が貸し出しを行なっている市民農園の1区画を借りて野菜を育てています。未経験から野菜作りに挑戦したので最初は大変でしたが、今では10種類以上の野菜を収穫しています。


ーーすごい増えましたね。未経験からのスタートだと慣れるまで結構苦戦したのでは……。

失敗ばかりでした(笑)。実はこの前もきゅうりの苗を1本ダメにしてしまって……。

でもこの失敗談を個人で運営しているブログに載せたら、色々なコメントが寄せられました。「ちゃんと管理していないから!」と辛辣な意見や「失敗しないように気をつけます、ありがとうございます」と感謝されることも。

移住して畑を始めている方で、成功談を載せているブログはよく見かけるのですが、失敗談はほとんど見当たらないんです。

わたしのように失敗談を載せると経験者からアドバイスをもらったり、これから始める方へ学ぶチャンスだと考えているので、このような発信も大事だと感じますね。


ーーたしかに。これから家庭菜園を始める方へ有効な情報ですね。

わたしのように地方へ移住してくる方のなかには、畑に興味がある方も多いのでぜひわたしの失敗談を活用してほしいです。

また以前、移住した方から「近い趣味の人に自分から話しにいかないと仲良くなれない」と言われたことがあるんです。

地方、ましてや外からの人間なので、畑の知識を蓄えつつ積極的に畑仲間を増やしていきました。今ではそれぞれの畑で獲れた野菜で収穫祭を行なっていて、季節の産物を味わいながら家庭菜園を楽しんでいます。

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s自家栽培の野菜を持ち寄ってピザ作り。う〜ん、色鮮やかですね!


これから移住をする方へ


ーー畑の交流を通じて人との関わりを大切にされているんですね。地域のコミュニティに入っていく自信がなく不安を抱えている移住者もいるのではないでしょうか。

たしかに。地域によっては関わり度合いが高く、住民の繋がりがきちんと存在するところもありますね。新しい土地での地域付き合いを希望しない方もいらっしゃいますが、わたしはある程度地域の人とは納得して付き合うほうがいいと感じます。

最初から戸建ての家に住むと地域活動のハードルが高くなると感じたので、現在わたしは賃貸アパートに暮らし、無理のない範囲で地域の方とお付き合いをしています。

今後は慣れてきたら別の場所に引っ越して、新しいコミュニティを楽しんでみたいですね。


ーーこれからが楽しみですね。最後に、今後地方へ移住を悩まれている方へメッセージをお願いします!

移住と聞くと、大げさに捉えてしまう方が多いと思います。

だけどわたしは国内の移住だったら、単なる「転職」「転居」と考えてほしいですね。「他の県へ移動するだけ。失敗したらまた戻ればいい」と。考えすぎて気構えてしまうと地方の人との交流がうまくいかなかったりするので、気軽に考えましょう。

また、県外からの移住者へ支援金が発生する市町村もあるので事前に調べておくことをおすすめします。行政の支援で活用できるものは活用して、気持ちのいいスタートをきってください!

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インタビューを終えて

移り住むまでにさまざまな苦労を乗り越え、移住してからも試行錯誤を重ねるゆうきさん。決して移住にこだわることはなく、「失敗したらまた戻ればいい」と切り替える姿が印象深かったです。

移住を計画してから、実際に越してくるまでも「無理せずがんばろう」といったマインドが一番大事だと感じたインタビューでした。

今では560記事も投稿されているゆうきさんのブログ。移住したときの経験談や心情を赤裸々に語っているので、気になる方はぜひ読んでみてください。

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