新生・sabu unitを聴く!

3月10日(金)
『Sabu UNIT』
豊住 芳三郎 drums
森 順治 alto sax
富松 慎吾 大太鼓
照内 央晴 piano
新宿「新宿Pit inn」

前回、大太鼓は楽器というより「場」「空間」を現出するための「装置」だと思っていたが、当たっていました。あの震動は細胞に直接働きかけて活性化する。それにより聴衆にプレイの細部を意識させるのではなく、全体のサウンドの塊に意識が包み込まれるような体験をもたらす。今回、ギリギリでピアノの音も聴こえるように調整されていたのでよくわかった。テルピアノは、ちらし寿司に混ぜ込まれたウニ、というかフォアグラみたいなもんだよね。

「ジャズはお祭りだ!」というのは大昔の「ジャズ批評」という雑誌のキャッチコピーだが、まさにそれ。祝祭空間、その中に放り込まれたフリージャズが、どう聴こえるか。

こういうアヴァンギャルド音楽が、あまりに「こう来たら、こう食う」みたいな、詰め将棋みたいな聴かれ方をしていることに、僕も忸怩たる思いがありました。本来もっと「めちゃくちゃ」で、驚かせるようなもんだろう、と。面白くて、気持ちいいことが、音楽性云々より先にあるはず。

もちろん、もたついたり雑味があると気が散ってしまうので、最高度のテクニックで固められているべき。しかし本当のテクニックというのは、こちらにテクニックを意識させないものなんだよね。

本職の将棋指しは盤面を見ただけで、攻防の来し方行く末を直観的に読めるという。だったら音楽も「聴き手にとって」そういうものであるべき。線ではなく面を見せる。

さすが豊住芳三郎ですね。他のみんなが目を付けてないことに気が付いて、一歩先んじている。

最古参が最先端で最過激じゃ、まずいでしょう、皆の衆。これはサブさんから「現在」への挑戦状だ。度肝を抜かれました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?