言葉のノートをもらった夢
ピースの又吉が顎に無精髭を生やしたような風貌の人に、
私はコントラバスを習っていた。
その日はレッスンの日ではなかったのだが、教室に置いてくるものがあって立ち寄った。
用事が済んだので、誰にも見つからないようにそそくさと教室を出た。
廊下を少し進んだところで、その人が私を見つけた。
そして追いかけてきて、私に一冊のノートをくれた。
そのノートは、大きさはB6くらいで、表紙は黒地に赤い和柄のちりめんで金魚が施してあった。
中は白い無地で、1ページに一つずつ言葉が書いてあった。
「先に帰ります」
「ありがとう」
「また明日」
など、全部で6ページくらいあった。
どのページも余白を十分に残して、文字の周りやページの端などが、
キラキラしたラインストーンや、水色やオレンジやピンクといった可愛くて優しい色合いの細いカラーペンで飾られていた。
私はそれまで、「またよろしくお願いします」という言葉しか書かれていないノートを使っていた。
それでも不便はなかったのだが、その人は、私がもっと言葉を使えるようにこのノートを作ってくれたのだ。
ラインストーンやカラーペンの使い方がとても丁寧で、その人の無精髭の風貌とはかけ離れた細やかで几帳面な仕上がりだった。
きっと慣れない作業だっただろうに、私のためにこんな素敵なノートを作ってくれたのだ。
その人が背中を丸くして目を机に近づけて、ピンセットで慎重にラインストーンを並べている様子が思い浮かび、胸のあたりが暖かくなった。
自分をこんな気持ちにさせてくれる、こういう人こそありがたいな、大切にしなければな、と思ったところで目が覚めた。
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