「ゼロ・ウェイスト・ホーム ごみを出さないシンプルな暮らし」を読んで

読み始めたときはゴミを出さないための徹底した暮らしぶりが信じられず、一度本を閉じた。そして二週間が過ぎた。図書館で借りた本だったので、読まずに返却しようと思っていたが、返却日の朝に軽い気持ちで再度読み始めたら、一度その内容の極端さに衝撃を受けて免疫できていたせいか、今度は単純に面白く読み進められた。返却期限が迫っていたので後半は駆け足になってしまったけれど。

ごみを出さないための基本的な考え方から、買い物、掃除、仕事場、子育てなど暮らしの中のあらゆる場面ごとに具体的なアイデアが書いてあって、自分とは違う習慣を持つ人の暮らしぶりが純粋に興味深く、それを自分の生活に当てはめて想像する楽しさもあった。
しかし、読み終わってみて、これは是非実践しよう、と思うことはただ一つ。

自分が住んでいる地域のごみの分別を正確に把握する、だ。

それだけ?と思うかもしれないが、あとはとても真似できないと思うことばかりだった。また今の生活を思い返して、既に実践できていると思ったところもあったが、私の場合、ごみを出さないというより、ものを減らすという意識のもとでやっていることだったので、この本のごく一部を実践しているに過ぎなかった。

この本によると、ごみを出さないための基本となる5つのステップは、1.Refuse(断る) 2.Reduce(減らす) 3.Reuse(繰り返し使う) 4.Recycle(リサイクルする) 5.Rot(堆肥化) なのだが、その2~4が自分なりに実践できていた部分だ。

1.Refuse(断る)は、やりたいと思っても大抵の場合相手がいることなのでなかなか難しい。母が自粛中の趣味も兼ねて作った手作りマスクを、もう何十枚ももらっているとしても、樹木希林のように毅然と断る※気にはなれない(母は初期の作品はできが悪いから捨てていいと言ってくれているのでそのうち選別して、ある程度は手放すと思うが)。
5.Rot(堆肥化)はこの本でコンポストの種類を知ったけれど、庭のない狭い我が家に置くスペースはないと思った。

2.Reduce(減らす) 3.Reuse(繰り返し使う) 4.Recycle(リサイクルする)に関しては、目下クローゼットを中心に物を減らしている最中だった。先日もここ半年で整理できた衣料品を区の巡回回収に持っていったところだ。また、ものを増やさないため買い物も食料品以外は割と慎重になっている。他にも、会社には毎回水筒を持っていくし、使い捨ての不織布マスクは外であまり人と会わなかった日などは押し洗いして何回か使ってから捨てる。それに1dayコンタクトとハードコンタクトと眼鏡を併用して、それぞれ会社や外出時と数時間の運動とその他の場面とで使い分けている。

しかし、この2〜4に限っても著者の徹底ぶりには到底比べものにならない。多分、根本的にごみを減らすことへの意識のレベルが雲泥の差なのだ。特に使い捨てのものを減らすことへの意識が私には完全に欠けている。家のものを増やしたくはないけれど、使い捨てのものは家にずっと残るものではない消耗品だから、減らそうと思わないのだ。だからアルコール除菌シートやキッチンペーパーは毎日ふんだんに使うし、コンビニでもらう割り箸やスプーンなどは断らない。

まず筆者はパッケージのごみを出さないための買い物の仕方が徹底していて、全て量り売りかデポジット容器のものしか買わない。本では著者の具体的な買い物方法や量り売りのお店が載っているサイトも紹介されている。もしかしたら私の住む地域にも量り売りしている店があるのかもしれない、行ったことがない店に行ってそれを探すのも楽しそうだと思ったが、単に新しい生活を想像して楽しむためのフィクションに留まっている。今は、近くのスーパーで気軽に買い物ができ、テイクアウトで色々な飲食店の味を家でゆっくりと味わえるのがありがたい。

また、著者は量り売りしていない歯磨き粉や化粧品などの日用消耗品はトイレットペーパーを除いて手作りをする。子どもが使う絵の具まで食品から作り出してしまうのには驚いた。掃除用の化学薬品の代わりにお酢や重曹を使うなどは既にナチュラル志向の定番になりつつあると思うが、他のものは手作りする手間を考えると私の生活に取り入れるには少々レベルが高い。それに、たとえ大した手間ではなくともシナモンパウダーとビーツパウダーを頬に乗せるのはなぜか抵抗がある。5年前のチークは平気で使っているというのに。

そんなこんなで、この本に書かれていることで新たに実践したいことは、先に書いた、自分が住んでいる地域のごみの分別を正確に把握する、というものくらいなのだ。こんなことは既に多くの人が実践していることだと思うのだが、私は、瓶と缶と食品が付いていない紙ゴミと燃えないごみは分別していたけれど、プラスチック容器や発泡スチロール容器や牛乳パックなどは全部燃えるごみに出していた。分別した方がエコだという気持ちはありつつ、プラスチックが入っていた方が燃えやすいから、容器を洗う方が水質汚染につながるから、という都合の良い大義名分を掲げて、堂々と燃えるごみに出していた。

しかし、ここ最近はご飯のテイクアウトを利用する機会も増え、家から出るごみの量に罪悪感、とまではいかないけれど、一つの家庭から毎日こんなにごみを出していて果たして良いのだろうかという漠然とした疑問を覚えることが多くなった。今の状況では、家から出るごみの全体量は減らせなくても、分別して資源にできるものは循環させたほうが気分が良いに違いないのだ。

そういえば、もう一つ新たに実践したいものがあった。掃除の方法の一つに、空気を浄化する植物というのが紹介されていた。NASA調べとあり根拠がしっかりしていそうなもので、ぜひ欲しいと思ったが、モノ増やすんかい!と珍しく自分に突っ込みを入れてしまったので早々に却下した。でも、その植物のリストを見ながら画像検索をして、もし置くならどれが良いか、というフィクションとしてしっかり楽しむつもりだ。

※樹木希林が晩年ものを持たないことにこだわっていたのは恐らく有名な話。偶然見かけた番組で正確には忘れたが、樹木希林がどこか地方を訪れるような感じのものがあった。その地域のお蕎麦屋さんかどこかの料理屋さんに入ったときに、そこの女将さんからはっぴか何かをプレゼントされそうになっている場面が映し出されていた(記憶がいちいち曖昧で申し訳ない)。もちろん樹木希林は断ったのだが、女将さんもしばらく譲らず、樹木希林が「ここで私がこれを受け取ったらこの場は収まるかもしれないけれど、家に持ち帰った後に私はずっとこのもののことを気にして後悔ことになる」というようなことを言って、最終的には女将さんが諦めたのだった。これはこの本に関連づけるなら、実践が難しいRefuseの先にある展開の一例であると言えるが、樹木希林のものの命に対する考え方が滲み出ていて、落ち着かない気持ちにさせられながらも印象深い場面だった。

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