魅惑のチキルーム

小学生の頃、東京ディズニーランドで一番好きなアトラクションは「魅惑のチキルーム」だった。
好きな、と書くと語弊があるかもしれないが、朝早くから来園し、人並みをかき分けて進み、スプラッシュマウンテンやビッグサンダーマウンテンなどの人気アトラクションを何時間も並んでやっとのことで楽しんだ後、魅惑のチキルームは人を避け涼をとるには最高の場所だったのだ。

魅惑のチキルームについてごく簡単に説明すると、円形の劇場で中央の天井に設置された機械仕掛けの鳥や花が人形が歌を奏でる、ハワイの自然を舞台にしたストーリー仕立てのショーだ。
ちなみに私が好きだったのはスティッチが登場する以前のものである。

ディズニーランドもディズニーシーも今は入園制限がかかって、行ってしまえばアトラクションに並ぶことも人混みに酔うこともなく快適に過ごすことができるようだが、以前のディズニーの人の多さは尋常ではなかった。

あの頃は夏休みに家族で訪れることが多かったので、行く時は決まって暑かった。
そんな中で魅惑のチキルームは、夢の国であるディズニーランドの中のそのまた別世界であった。
とにかく人が少ない。ひらけたエントランスは周辺に岩を模したひんやりとした腰掛けがあり、その背中側には泉や滝が作られていて、ハワイの神様たちの像が立っていた(記憶違いだったらすみません)。

像の近くにはその神様の説明書きが書いてあった。神秘的なものが好きだった私は、その神様たちの説明書きを、ミッキーのサインをもらうために持参した小さなノートにメモした。
メインのショーよりも、このエントランスの空間が楽しかった気がする。

ショー自体は、暖色系の明かりの中で、機械仕掛けの南国の鳥や花が歌うという癒し効果抜群のものだ。途中雷と嵐の演出があったりはするので、苦手な方は注意が必要だが。

スティッチが登場するようになったものも一回だけ見たが、これに関しては、そういったキャラクター色の強いものよりも、ハワイの神様たちと鳥と花の世界観の方が好きだと思った。

かといって、果たして過去の魅惑のチキルームを目当てにディズニーランドに行くかというと、そんなことはない。
やはりスプラッシュマウンテンやビッグサンダーマウンテンやホーンテッドマンションありきの魅惑のチキルームなのだ。
要はきっとバランスなのである。

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