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雲雀丘花屋敷のみちをゆく# 8 ベルのピロシキ

子供のころに食べたあの味をふと思い出す、ということはありませんか?

同級生と雲雀丘トークをしていたときのこと。雲雀丘花屋敷駅前に神戸ベルがあったという話題で盛り上がりました。

駅前のタクシー乗り場から少し行ったビルの1階にあり、いまはアメリカヤほーむクリエイトという不動産屋さんがあります。

雲雀丘のメインストリート、この横のビルに神戸ベルがありました

昭和50年代から60年代、ベルは西洋の香りのする、モダンでハイカラなパン屋さんでした。パンだけではなくプリンやアイス、ケーキまで売っていた、とても楽しいお店でした。

一番好きだったパンは、明らかに日本語ではない名前をしていました。ピロシキ。ロシア・東欧のパンだと当時小学生だった私は知らなかったのですが、(まるでピエロみたい)と思ったよう、インパクトのある風変りな名前は、まだ知らない異国の情緒をほのかに感じさせるものでした。

だんだんとピロシキのシンプルなおいしさに大きく心が動かされ、それまで一番好きだったベルのピザパン(これはスパゲティまでのっている、今ではほとんど見ない、もりだくさんなパン!)をいつしか超えたことを覚えています。

ベルが雲雀丘花屋敷から無くなった日のこと、それがいつだったのかは、思い出せません。小学生のころだったか、中学時代もまだあったのか。その日からピロシキを食べる機会はありませんでした。そしてピロシキというパンのことも忘れてしまっていました。

あの油の味。中の主張しすぎないひき肉の味。カレーパンのようなこんもりした風貌。パンの表面に見えたパセリの緑色。透明なガラスのとびらが2か所あったことや、学校から帰ってきた土曜日によく食べていたなど、次々と思い出されました。

子供の自分にとって贅沢なパンだったよなと、少し背伸びをしたような感覚を思い出した今、あのベルのピロシキをもう一度食べてみたいと思ったのでした。


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