階級ストレスをコミカルに描き出す「パラサイト半地下の家族」
韓国映画の「パラサイト 半地下の家族」を観てきました。
なかなか。
こういう作品以前にも観たことある気がするけれど忘れてしまったな。
おすすめ度
★★★★☆(4.5)
楽しい作品が好きな人にはちょっと厳しいかもしれないけれど、現実が描かれているので、直視したほうがいいという意味ではおすすめ。
エンタメ作品としても面白かったし、フィクションでありながらノンフィクションでもあると思われる。
ストーリー
貧富の差がなにを生むかを如実に描いた作品。
コミカルさ、スリラー、エンターテイメントを挟みつつ、人間の憎しみが上下関係によって生まれることをリアルに描き出す。
差別は踏まれている方にしかその痛みがわからない。
人は人を知らぬ間に傷つけている怖さがある。
どんな手を使ってでも、その景色が見たい。”そちら側”へ行きたい。
生まれながらに”持たざる”ものだった者たちが、”持つ”者のアセットを使ってなんとかそちら側への移行を目指す。
TIMEとかアリータもそういうとこありましたね。
社会が悪いので諦めます、というところに留まらず、手段を選ばずに頭をひねりながら”上”を目指して挑んでいく貪欲な姿は、自己肯定感が低めな今の日本には少し珍しい姿勢で。
自分はスパイ映画系を見て育っているので慣れているけれど、そういえば日本では「痛快に騙す」系の作品は根本的に少ない気がします。
「騙される方が悪い」という概念は日常生活でもあまり見ないので、国民性の違いは少し感じる。(自分はコメディの一種として鑑賞しているけれど、日本だともしかすると不快に感じる人が多いのかも知れないな…)
一方で、騙そうとする彼らの爪が甘いところも、目の前の欲に負けてしまうところも、結局人間はどの所得層にいてもやることは同じということも。
どれほど着飾って”そちら側”に行ったかに見えても、隠された実態が”匂い”として染み付いて、滲み出てしまうその悔しさも。
リアルで、身につまされる作品でした。
韓国の景色
韓国の作品をあまり観たことなかった分、生活、景色、言語、家族関係などを知れたのもよかったです。
ヨンセイ大学は私大の中でも、国立大学であるソウル大学(東大的な存在)に次いで難しいところなようで、早慶あたりのイメージ??
お手洗いの描写が日本のそれとはちょっと違う仕組みに見えて(あれは特殊なのかな?)韓国ってあんな風になっているのかな?と思いながら見ていました。高い位置にあると大変そうだ。
最近、日本のお手洗いでも「座る向きはこうですよ」とディレクションしているイラストをよく見るけれど、あれはどこの国の文化なのだろう。
海外に泊まるときいつも思うけれど、どうもユニットバスが基本に見える。日本のマンションのように分かれているところが少ないような。
高級住宅の方でも、あのお風呂は入りにくそうだなーと思うお風呂が出てきてました。
富裕層だとやっぱりインターの幼稚園や小学校に入れながら、ボーイスカウトなどに入れるのですね。(作品内では「カブ」と呼ばれていた)
ボーイスカウトってモールス教えてくれるのですねぇ。面白そう。
生活差分は、国というより所得層によるのだなと思いながら観ていました。
総論
自分の欲求が満たされぬとき、人に優しくする余裕を持つのは難しい。
まずそれが満たされてから全体調和のために自分のリソースを分け与えようという心が生まれる。
SDGsの根幹がそこにありますが、この視点を持つと、日本をはじめとした多くの人が疲弊している現実に気づく。
自分も焦る人間の一人で、それでも”そちら側”へ這ってでも行かないときっと心の平安は得られなくて。
それでもそのことばかりを考えていても疲弊して。
”そちら側”に行って平穏が得られないこともあれば、”そちら側”へ行かずとも、好きな人たちと過ごすたわいのない時間が、ただただとても愛おしいことに気づいたりもする。
一定のものを掴む努力は忘れずに。
そして、目標など立てても明日は来ないかも知れないなら、”今”にしっかり心を向けることも、きっと、大事。
そういうループに、人間は何度となくはまっていて、これからもそうなのだろうなと思うと、重たくて、物悲しくも、生きる意味を”考える”動物である人間の宿命なのだなと考えさせられる作品でした。
おすすめ。
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