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俺は今日、お金で買えない価値を手に入れた

今日、この先100億円積んでも買うことのできない価値のある経験をした。

中学三年生の3月末、生まれ育った山形から埼玉の高校にスポーツ留学する事になった僕は、引っ越し前日に家で荷造りをしていた。

そこへ隣に住んでいるプロガイドの白田さんが、「昇、明日から埼玉だろ?最後だから山に行くぞ!」と半ば強引に誘われて、生まれて初めてバックカントリースキー(注1)というものを経験した。

家から車で15分くらい走ると、程なくオープン前の月山スキー場(注2)へ到着した。大型のブルドーザーが駐車場の除雪に精を出し、僕ら以外はほとんど誰もいない快晴無風の日だった。

白田さんと僕は登山口から山に向かって雪原を登り始め他のだが、不思議と辛いという感覚はなく、冒険に行く時のような高揚感があった。

 *注1 バックカントリー.....遭難救助で報道されると自己責任論者がyahooニュースに頓珍漢なコメントするやつ
 *注2 月山スキー場.....4月~7月にオープンする変態が集まるスキー場

原体験

30分ほどゆっくりとハイクアップして森林限界を超えた台地へ出たら、白田さんは「お昼ご飯を食べよう!」と言ってバックパックに入れてあったスコップを取り出し、雪を上手に掘り出して2人分の椅子とテーブルを作ってくれた。

母親が持たせてくれた保温ポットから、少々ぬるくなったお湯を入れて3分待ちきれずに食べたカップヌードルは、麺がバリバリ硬いのだけれどものすごく美味しかった。

日差しが木々の間から差し込み、遠くに白銀に光った朝日連峰が見えた。
明日親元を離れて埼玉に出発するのかと、少々おセンチな気分も相まって山の景色がものすごく綺麗に見えた。

ドロップインの瞬間の霧氷のついたブナ林と、木々の中に差し込む陽の光と、雪原に写るブナ林の影が信じられないほど美しかったことは、ドラゴンアッシュの影響もあり完全に思い出補正された美しい景色として、今でも脳裏に焼き付いている。百合の紋章は見えなかった。

そしてどうやら、これが僕を無意識のうちに形作る原体験になっているみたいだ。

いつしか大学を卒業し普通のサラリーマンになっていたのだが、気がついたら僕は今、白田さんと同じバックカントリースキーのガイドになっていた。

初めてのバックカントリースキーがこの上なく楽しくて、素晴らしい景色だったことは、僕にとってラッキーだった。その後、バックカントリースキーに対してすごくいいイメージを持ち続けられていた。

スキーを好きになってもらう方法

そして今日、3歳の娘とスキーへ行った。娘のスキーデビューの日だった。

僕には思い出補正された完璧なバックカントリーデビュー日の思い出がある。そして、娘にもスキーを嫌いになって欲しくなかった。大きくなったら娘と一緒にアメリカに滑りに行きたいからだ。

その為には「パパ臭い!あっち行って!」と言われないように体臭に気をつけなければならないが、まずは娘にスキーを好きになってもらわないといけない。

だからスキーデビューを小春日和の日に選んだし、無理すれば一人で滑れる斜面も怖くないように最後まで手を離さなかった。スキーブーツも痛くないように少し大きめにした。ヘルメットは大きすぎてズレていてた。

どうやら僕の企みは成功したようで、「スキー楽しかった!また行こうね!」と言っていた。しめしめ。

ということで娘のスキーデビューは成功し、アメリカスキー旅行20年計画の第一歩が始まった。そして、娘と初スキーという2020年の目標も無事達成できた。

僕のバックカントリーデビュー日と同じように、今日の娘スキーデビュー日も、いくら金を積んでも買うことのできない「特別な思い出」になった。

明日から旅行貯金始めよう。あと毎日風呂に入ろう。

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