詩 「湿地」

夜の湿地のように
ぬめっとした
記憶の森を歩き回っていると
見たことのない緑や
聞いたことのない音や
匂ったことのない香が
脳裏に浮かび上がる

汗か涙かあるいは
得体の知れない水滴が
いつのまにか
頬を濡らし
足跡の残っていない
道を振り返ると
重たい風が低く吹く

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