眠り

玄関の扉を開けることさえ精一杯になるほど
疲れたある日の夜

思考と感情と筋肉が同時に停止して
血液が血管を流れていることと
肺が膨らんでは縮むことだけが
それだけが明確に分かる

何度読んでも分からない
読めば読むほどに分からなくなる
小説に栞を挟んで閉じるように
ゆっくり目を閉じる

記憶や知識
あるいは経験が
身体から離れていく

手を伸ばして引き留めようとしても
掴めない
どんどん離れて
到底届かない距離まで離れて
諦めるのと同時に眠りに就く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?