詩 「棘」

微かに煌めく月明かりに
誘われて夜を歩いていると

民家の庭先に咲く数輪の花を咲かせた薔薇の影が
夜道に映り

薔薇の彩色は
昼に見るそれより
とても濃く艶やかで

茎の棘は
人間の欲望や羨望
あるいは夢想を
刺し潰してしまうほど鋭い

自分と薔薇の間を
初夏の香りを纏う風が
他を這う様に吹く

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