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帰りたくなくて

帰りたくなくて、
帰りたくなくて、
何処か寄れる場所を探して、
夜の街を独り歩いた。

居酒屋やバーや喫茶店に、
独りで入る勇気も元気も無くて、
コンビニの横の道路にある石畳に腰掛けた。

少ししてから、
クロスバイクに乗った大学生と思しき二人組が、
すぐ横に居座って大きな声で話し始めた。

居場所が居場所で無くなった瞬間に立ち上がり、
また歩き始めた。

成る可く小さく、
成る可くゆっくり、
成る可く休みながら、
一歩ずつ一歩ずつ、
家に近付いている筈なのに、
家から遠ざかっていくみたいに、
矛盾する様に歩いた。

終電時刻を過ぎたバス停のベンチに座って、
秋と冬の間に浮かぶ満月を見上げた。

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