絶望した顔で希望の光を探した
その日はたしか金曜日で
発車直前の電車に飛び乗るとかなり混んでいた
空いていた前寄りの車両に移り座席に座ると
向かい側の車窓に自分が映るのが見えた
車窓に映る自分の顔は
何か大切なものを失った後の
絶望に伏した顔だった
他の座席に視線を移せば人間たちが
掌に乗る四角い画面の先に広がる狭い世界の前で
嘆いたり
笑ったり
憂いたり
喜んだり
騒いだり
溺れたり
死んだり
していた
皆々絶望しているんだと思った
動物的な人間でいっぱいになった電車を
自宅の最寄駅の一つ前で降りて
階段を一気に駆け下りて改札を抜けた
いつもより長い駅から自宅までの道のりで
精一杯吸い込んだ空気は昨日より澄んで
気管から肺まで届いたのがはっきりわかった
それから閑かな秋の夜道をひとり
希望の光を探し歩いた
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