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夏の訪れ

それはいつも予兆なく急で
こちらの事情など関係なく
勝手気ままに飄々と訪れる

箪笥の匂いがするTシャツを着て
サンダルを履いて玄関を出る
薄汚れた自転車のサドルは熱を帯びて
余儀なく立ち漕ぎをする
車の下の影に寝そべる猫と目が合って
顔見知りの人と会ったみたいに会釈する
じんわり滲む額の汗を袖で拭こうとすると
若い朝顔が咲いているのが見える

鼻で吸った空気は熱く
目に映った色彩は濃く
世界の扉が開く音がする

それはいつも予兆なく急で
こちらの事情など関係なく
勝手気ままに飄々と訪れる

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