赤裂

冬と春の間を吹き上げる冷たい風が
ぱっくり開いた中指の赤裂に針みたく突き刺さり
全体が赤黒く澱んだ手を
薄いコートのポケットに突っ込む

赤裂は
何度も塗りたくった軟膏の効用が
追い付けない早さで深く
傷を拡げる

天気予報を裏切った晩冬の雨が
赤裂を負った手を撫でて握り締める

雨に滲んだ血が地面に滴る

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