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少女

街の片隅にある
雑居ビルの階段に
たったひとりで
少女は座っている

黒目は真ん中に
唇は閉じたまま
笑うことも泣くこともない
喜怒哀楽を失ったのではなく
もともと何も持たずに
少女は座っている

毎日同じ場所にいて
毎日同じ格好をして
毎日同じ人間として
少女は座っている

いつの日か
あの場所で
その少女は
目を向けて
唇を開いた
絞り出した言葉は
海の向こうの
遠い国の言葉だった

返す言葉が分からなくて
座ったままの少女の横に
座ることしかできなかった

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