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微睡

繁華街の外れに位置する古いビルのしがないバーにいる。

晩秋の寒夜に沈む様に読み込んだリルケ詩集にある言葉たちをラム酒に入れながら、夜が更けるのと同じ早さで飲む。

ラム酒に混じった言葉が食道から血管、胃腸に届き、少しずつ全身に染み渡る。

それと同時に思い出や記憶、過去の物事が溶け始める。

三杯目のラム酒を飲み終わると、過去の物事は完全に溶け切る。

そして何かを失ったのかそれとも何かを得たのか、ゆっくりバーカウンターに微睡む。

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