床の血塗れ

暗くとても暗く寒い晩冬の台所で
ガラス片みたく角の尖った言葉の断片が
裸足の足裏に刺さるも
床の冷たさが痛覚を麻痺させる

お湯の出ない蛇口を捻って
薬缶いっぱいに水を入れて
青い炎で湯を沸かす

その間に風呂を沸かす為
風呂場へ向かうと
浴槽の片隅に蜘蛛がひっそり佇む

蜘蛛は動くことと動かないこと
どちらをも選ぶことなく
ただそこに居る

暫く見つめていると
時間の感覚を見失い
やがて視界がぼやけてくる

薬缶のお湯が沸く音で
元の視界を取り戻し
台所の方へ振り向くと
はじめて床が血塗れになっていることに気付く

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