ICU退室時、退院時の計画
敗血症ガイドライン(SSCG2021)を少しずつ紐解いていきます。
今回はPICSに関係するDischarge Planning(ICU退室時、退院時の計画)について解説します。
ICUで治療に成功して生存した患者さんが、どのようにしたら社会復帰できるのか?
その一つの要因としてICU退室時または退院時に、我々医療従事者が患者さんの状態を適切に申し送ることができるかどうか、またその後のケアを計画できるかが重要になります。
ここについてはSSCG2021では3つの推奨や提案があります。
CQ85. ICU退室時に集中治療からの移行プログラム(Critical care transition program)を使用することを提案する。(弱い推奨、非常に低いエビデンス)
移行プログラムとは様々なプログラムを含みます。主には多職種や看護師を中心としたICU退室後のラウンドや、介入の具体的な計画などです。
メタアナリシスではこのような移行プログラムを使用することでICU再入室のリスクが低下することが分かっています(リスク比:0.87 [95%CI, 0.76-0.99], p = 0.03)[1]。
次は薬についてです。
ICUで使用した薬をそのまま延々と使用していたり、本当は不良な薬が中止されていなかったりすることはないでしょうか?
本当はそんなことはあってはいけませんが、決して稀なことではないと思います。実際の文献では1-6%の患者さんで薬のトラブルがあったとの報告もあります(2)。
そこで、次のような推奨がされております。
CQ86. ICU退室時または病院退院時に薬を調整することを推奨する。(Best practice statement)
つまり、ICU退室時や退院時に本当に必要な薬を使用しているか、本当に継続が必要か十分に調整する必要があります。不要な薬を延々と使用していてはそれが原因でPICSになりかねません。
このような場合は、やはり多職種連携が重要になります。
メタアナリシスでは薬剤師さんを中心として、薬の調整介入プログラムを行うことは薬のトラブルを減らすことが分かっています(リスク比:0.34 [95% CI, 0.23-0.50)(3)。
そして最後は説明の重要性についてです。
CQ87. 退院時にICU滞在中の情報、疾患名、治療内容、敗血症罹患後の障害について口頭または文書での説明を推奨する。(Best practice statement)
重症患者の入院中の情報を患者や退院先の病院にしっかりと伝えることが重要です。こんなことは当たり前のことかもしれません。
しかし、3人に1人しか入院中のPICS(精神、身体、認知機能の障害)につての情報を申し送れていないようです。
PICSを予防していくためには治療内容はもちろんのこと、入院中の障害、また今後予想されることとなどをしっかりと患者さんや退院先の病院や施設に申し送る必要があります。
このことはABCDEFGHバンドルのG:Good handoff communication(良好な申し送り伝達)にも該当してとても重要なことになります。
さて、今回はICU退室時、また退院時に注意することをまとめました。
PICSを少しでも減らすために私達医療従事者は日々勉強していく必要があります。一緒に頑張りましょう!
参考文献
1. Niven DJ, Bastos JF, Stelfox HT. Critical care transition programs and the risk of readmission or death after discharge from an ICU: a systematic review and meta-analysis. Critical care medicine. 2014;42(1):179-87.
2. Scales DC, Fischer HD, Li P, Bierman AS, Fernandes O, Mamdani M, et al. Unintentional Continuation of Medications Intended for Acute Illness After Hospital Discharge: A Population-Based Cohort Study. Journal of general internal medicine. 2016;31(2):196-202.
3. Mekonnen AB, McLachlan AJ, Brien JA. Pharmacy-led medication reconciliation programmes at hospital transitions: a systematic review and meta-analysis. Journal of clinical pharmacy and therapeutics. 2016;41(2):128-44.
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