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僕の夢物語 理想の町12(最終話)                                     ~新たな街づくり~

 吾一は新たな街づくりを決断していた。
 アメリカのアーバインなど計画的に整備された都市を参考に、夢野市と隣接する中山間の村に跨る広大な農地と山間地を計画都市として整備していくものである。
 夢野市と隣村の30平方キロを取得して、人口5万人が居住する都市を計画していた。
 現在の夢野市の人口を上回っており、この都市計画が進行すれば、夢野市の人口は今の倍以上になる。
 すでに、計画都市づくりのための新たなプロジェクトが立ち上げられ、全国から建設建築の専門家を招き入れ、開発は急ピッチで始められていた。

 計画都市のコンセプトは、学園を核とした国際都市である。
 核となる大学の設立は着々と進行していた。
 国の許認可を受け、吾一の親交のあるカリフォルニアの大学との提携も順調に進んでいた。
 世界各地から留学生を募集するため、吾一の運営する旅行代理店をはじめ、留学生を専門とした世界の旅行代理店でも、先行して大学の概要が伝えられていた。
 計画都市建設のための吾一のブレーンとなっているのは、夢野市でベンチャー企業として新たな事業を立ち上げた若者たちだった。
 それぞれ多くの者がすでに各分野で活躍しており、一部上場する企業の経営者として台頭している者もいて、吾一の企業団として、強力なリーダーシップを発揮していた。
 大学の講師陣の陣容も次第に固まってきていた。多くは世界的権威の学者や研究者であり、その子弟も含め、これまでの日本の大学の教授たちとは比べようもない布陣が整えられていた。
 ヨーロッパやアジア、アフリカの各地からすでに何十万という学生の問い合わせがあり、世界規模の大学「University of Yumeno」の船出は間もなくに迫っていた。
 
大学の開学にあわせて、計画都市 Dream City Yumeno の整備は急ピッチに進められていた。
 建設に伴う事業費は莫大なものであり、吾一の企業だけでは、到底賄いうるものではなかったが、様々なファンドからの投資により、その規模は、際限なく巨大化していた。
 吾一の企業が発注し、吾一の企業が受注するといった形でも、資金は還流していた。
 一方、この計画都市のコンセプトに賛同する大手企業が食指を動かし、先行投資を行う形で参入もしていた。
 行政も安穏としてもいられず、人口の増加に伴う様々なインフラの整備に追われていた。
 保育園や学校の建設、あるいは、道路網や上下水道の整備など、行政もインフラの整備のため多大な公共事業を実施していった。
 公共事業にしてもそのほとんどを吾一の関係する企業が受注し、自身の計画都市建設事業と合わせ、建設インフラとでもいえるような状況が爆発的に続いていた。
 
 僕と吾一は、この計画都市の整備を遠く眺め、高台にある吾一の別荘のテラスでビールを飲みながら、午後の時間を過ごしていた。
 吾一が夢野市に来て10年以上が経ち、大きく夢野市は変貌してきた。
 今また目の前には、見渡す限りの風景の中、何千台という重機が新たな街づくりを行っている。
 見渡せないほどの広大な土地に行きかうダンプやミキサーの音さえ聞こえない高台から、急ピッチに進む整備を二人して眺めていた。
 
 西の空には陽が傾きつつある
 茜に映える広大な土地の向こうに太陽が沈みつつある
 次第に周りは暗くなり、僕たちはテラスから暖かな部屋に入り、何時終わることもなく夢の続きを語り合う
 そしていつしか夢の世界に
 僕たちの理想の町は、こうしてまた、新たに生まれ、創り上げられようとしている。
 
 僕の夢物語 理想の町 第一部 完

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