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僕の夢物語3 名人の系譜5                                       第5話 棋王戦 藤棋王に挑戦!

 プロ棋士編入試験の資格を取得した勢いそのままに、ベストエイトに進出していた棋王戦のその後の対局を勝ち切った。
 いよいよ藤棋王との対局である。
 藤5冠は、最年少の中学生でプロ棋士になり、プロになっても連戦連勝を続け、あっという間に最年少で棋聖位を獲得し、3年のうちには5冠を有し、今まさに棋界第一人者となっている。
 
 その人気は凄まじく、将棋を知らない人たちも関心を持つことから、将棋の内容ばかりでなく、対局の時の昼食やおやつの内容などが盛んに取り沙汰され、それがニュースになるほど人気を博していた。
 将棋を知らない人たちの間でも、藤棋聖の人気に引き摺られるように、将棋界が注目されていた。
 弱冠20歳の若き棋王に、アマチュア初の、しかも、40歳も年上の僕が挑戦することで、俄然僕も注目されることとなった。
 テレビは、毎日のように、藤5冠との対局者である僕を特集して、たちまち僕も全国的に知られることとなった。
 シンデレラボーイというには薹が立ちすぎているが、ワイドショーも視聴率を上げるために、高齢視聴者を意識しているので、ことさらに年齢にスポットを当てて報道を繰り返した。
 ワイドショーというのは恐ろしいもので、同じ内容のものを、面白おかしくコメンテーターが煽り、何日も何日も放送を繰り返す。
 毎日見続けている視聴者は、始め興味が無くても次第に嫌でも覚えることとなり、好き嫌いは別として、注目に値するものとして認知されていった。
 
 地元の夢野市では殊の外盛り上がっていた。その盛り上がり方はまさしく尋常ではなかった。
 棋王戦は、地方紙にニュースを提供する共同通信社と日本将棋連盟が主催していて、五番勝負は全国各地のホテルや旅館で行われている。
 夢野市では全市一丸となって、まだ対局が決まっていない第5局の対局場に地元夢野市のホテルでの開催を働きかけた。
 会場として立候補している国際観光ホテル夢野では、この対局を誘致するために、レセプションホールを改築し、対局場として受け入れ態勢を整えた。
 夢野市としても、対局を盛り上げるために棋王戦第1局より市内各所にパブリックビューイングを設置するとともに、ケーブルテレビを通じて放映することを決めた。
 有力な地元企業の一つは、棋王戦第5局が開催された場合、全国へ地上波放送するためのスポンサーになり、勝利の決する終盤をライブ中継することに決め準備を進めていた。
 このような夢野市の熱意が、主催者の共同通信、日本将棋連盟に伝わり、第5局の対局場は、夢野市の国際観光ホテル夢野で行われることになった。
 もっとも、第5局が行われる保証はない。
 棋王戦は5番勝負なので、先に3勝したほうが棋王位に決まり、対局はその時点で終了する。
 つまり、第五局が行われるのは、2勝2敗になった場合だけで有り、巨額の改修費やスポンサー料を投入しながら全くの無駄になる可能性は高かった。
 
 巷間では、今季棋王戦、藤棋王とアマチュアの挑戦者である僕との対局では、第5局が開催されることはないだろうと囁かれていた。

僕の夢物語3 名人の系譜6
 第6話 棋王戦始まる!
 に続く

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