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おじさんとうさぎ#5「愛の成就」

 チョコがララにふられてから数日たちました。チョコはあの日以来、ララのことが忘れられない様子で、土木のおじさんもチョコの恋心をおもうと、なんとか実らせてあげられないものか毎日なやんでいました。

おじさんは考えたすえに、ララとチョコの仕切りを網で仕切り、一階と二階で、ふたりが何度も網越しで出会えるようにしました。
何事にも興味津々なララはさっそく二階のチョコが気になるのか、それともチョコのえさ箱が気になるのか、頻繁に二階のチョコの部屋を下から覗いていました。

かわいそうなのはチョコです、そのたびに愛しのララちゃんだーと、飛び跳ねて近づき、うれしそうに下の小屋をながめていました。そんな日々が数日続いたあるひ、おじさんはまたララとチョコを引き裂く金網を取り外したのでした。

さっそく偵察ずきのララはぴょんと軽快なステップで、チョコの小屋の中へひとっとび、
牧草を食べていたチョコは、愛しのララちゃんの訪問に、大好きな牧草もほっぽらかして、ララちゃんめざして突進、すぐさまララにおおいかぶさりランバダダンスをおどるのでした。

そんな様子を土木のおじさんはしばらく眺めていましたが、急におじさんの土木会社にお客さんが現れてしまい、しばらくの間おじさんは二人の小屋から離れていました。ところがしばらくして、小屋のほうから、ドンガラガラガッシャーン!大きな物音が聞こえてきました。

おじさんが気になって見に行ってみると、チョコの部屋の中でララは悠然とチョコのえさにむさぼりついていて、そこにチョコがいません。おじさんは、はっとして下のララのお部屋をのぞき込みました。

「やっぱり!」
夢中でララを追いかけていたチョコは、うっかり一階と二階を結ぶ通路から落ちてしまい、いったい何が起こったのかわからないといった顔で二階をながめていました。

幸いチョコに怪我はなく、二度目のロマンスは、おじさんがうっかり二人をつなぐ扉を閉め忘れたおかげで、ララがチョコのえさを見事ゲットという結末に終わってしまいました。

「チョコ、すまなかったな、おじさんがうっかりしてたばっかりに・・・」
おじさんは、自分の失敗でチョコの恋を成就させてあげられなかったことを、反省して絶対にいつか二人を結びつけてみせる。いついしか、おせっかいな縁結び命の、「土木のおじさん」改め、「仲人のおじさん」と化していたのでした。

翌日は満月の夜でした。
おじさんは、何かがおこる、その日は心の中でそう予感していました。
というよりも、おじさんはネットである方のホームページから満月の日が良いと読んでその日を狙っていたのでした。

会社が終わって、さっそくララとチョコの仕切りを取り払い、今度はチョコが転落などしないようララがチョコのえさを食べに二階へ登った直後、二人の仕切りを再びふさぎました。
チョコの心にも、何か熱いものがあったのか、おじさんの目には今日のチョコは、一味もふた味も違う、獣のような雰囲気を感じさせられました。

そして二人の格闘が始まって、5分、チョコが後ろから愛のランバダを踊り始めたときふっとララの腰が上に競りあがったのでした。
「おー!」
おじさんは思わずその一瞬の出来事に声をだしてしまいました。
まさに一瞬、おじさんの目にも決まった!そう感じ取れた直後に、チョコは「ぶー」と声を上げて、ま横に、ドテッと奇妙な倒れ方をして、しばらく動かなくなったのでした。

「きまったー!つ、ついにチョコ愛が実った~!」
うさぎの愛が実ったときの男の子の行動を密かにネットで調べていた土木のおじさんは、二人の愛の成就を確信したのでした。

その後ララは何時もとは違う雰囲気で、寝そべっており、チョコは少しして起き上がりましたが、その場から離れたところで、つかれきった様子で寝そべりました。

「おおー、やったよ、おお~、やったよー」
おじさんは訳の分からない、喜びの言葉を何度も何度もつぶやき、小さなガッツポーズをしながら、チョコを見つめて
「うん、うん」とうなずいていました。

その時おじさんは、ホームランを打ったわが子一茂を、ベンチで静かに見つめ、じっと喜びをかみ締める長嶋監督の熱い気持ちに少し近づいた、そんな気がしたのでした。

それからというもの、あれほど逃げ回っていたララが、今度はチョコに熱いまなざしを向け、なんとチョコの寝ているそばで、ラブラブ愛を語り始めたではありませんか、
チョコもそれに答えて、二人はまるで新婚ほやほや、新婚旅行で処かまわずチューをしまくる、恋人同士といういちゃつきをはじめました。

「これは一本取られた・・・」
おじさんは二人の熱々ぶりにすっかりまいってしまい
「人の~恋路を~♪邪魔す~るやつは、窓の月さえ、憎らしい~♪、ええ、車やさ~ん」
美空ひばりさんのどどいつを、下手な歌声で一説つぶやき、今夜は二人をそのままにして帰ることに決めました。

「うまくやったな、チョコ、今日は仲良くやれよー」
おじさんがそういって後ろを振り返ると
「ぎょえー!?」
おじさんの後ろには、北方戦線から帰還したばかりの、ぼろぼろに汚れた軍服をまとった爺さんが、それは恐ろしい形相で立っていたのでした。

つづく

※うさぎさんの繁殖について、おじさんは当時軽い気持ちでララとチョコを一緒にしてしまいましたが、生まれた子ウサギの里親さんのことや、母うさぎの子育て放棄など、いろんな問題もありますので、おじさんのように軽い気持ちで行うことは危険です。振り返ってこのことだけはお伝えします。

今回のおまけ画像、チョコの顔洗い。。。
コレが実に可愛くて、今の時代だったらスマホで動画アップできたのに・・・

かわいいチョコの顔洗いでした^^

最後まで読んでいただきありがとうございます。このお話は2007年から約9年間、おじさんの会社でみんなから愛されていた可愛いロップイヤーウサギと土木のおじさんの楽しいエピソードです。
今では月に帰ってしまったウサギたちですが、可愛い写真に心和ませていただけたらうれしいです。

つづきはこちらです↓

前のお話はこちらです↓

おじさんとうさぎ目次です↓

土木のおじさんのWEBサイトです。
可愛いイラストなど公開しています^^↓


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