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おじさんとうさぎ#6「文吉じいさん」

第六話 文吉爺さん
今日も子うさぎ達は元気、元気、おじさんはララとチョコそして子うさぎちゃんたちに、朝の日課である、麦とご飯それに、おじさんの会社の社長さんが、五日市の知り合いの農家のおじいさんから分けてもらった、野菜をたんまりあげて、うれしそうに子うさぎさんを眺めながら、語り掛けました。

その日もおじさんは、子うさぎ達を一羽ずつ順番にひざに乗せて、みんなにたっぷりの愛情をそそぎ、里親さんのもとへ行った時の準備をしていました。

そしておじさんは、一羽の器量の良い子うさぎを抱き上げて、静かに語りかけました。
「君は、山梨に行って幸せになるんだぞ、いっぱい抱っこを覚えてかわいがってもらうんだぞ、美人ちゃん」
お鼻のところが薄茶のその子のことをおじさんと、おじさんの奥さんは美人ちゃんと呼んでいました。

はじめはもぞもぞ動いていた美人ちゃんは、少ししておじさんのひざの上で静かにおじさんに頭をなでられていました。


「君の兄弟も幸せにやってたぞ、、、」
おじさんはそう言いながら、週末里親さんのもとに旅立った二人の子うさぎを思い出していました。
里親といっても旅立った二羽の子うさぎは、おじさんの実家の姪っ子のもとへ向かったのでした。おじさんはがその子達が気になって仕方なく、朝こっそり会いに行き、そこでとても良い環境で育てられていた二人を見てうれしくなりました。

二人はココとオレオという可愛い名前になって、兄弟なかよく大切に育てられていました。
おじさんは残った4羽の赤ちゃんの行く末を考えていました。

おじさんの心のなかでは、生まれてすぐに、小屋の中から最初に顔を出してきた目の周りだけが茶色い子うさぎと、お父さんのチョコによく似た茶色い子は、手元にのこして育てる予定でいました。

そしてその子たちのことを、おじさんは茶々丸、竹千代と勝手に幼名をつけていました。

残った子うさぎは、お顔の鼻の下がドリフの髭ダンスのように濃い子で、おじさんは普段からヒゲゴジラのゴジ君と呼んでいる子と、おじさんのひざの上で静かに抱かれている美人ちゃんでした。

美人ちゃんは今月クリスマスのころに、山梨の自家生産販売をされている農家の方の御宅へ旅立ち、その直売所でみなさんから可愛がってもらえることが、決まっていました。

おじさんは美人ちゃんに、
「君は良かったなー、大好きな旬の野菜が食べほうだいのお家に行けるんだぞー」 
そう話しかけながら、美人ちゃんを静かに持ち上げ顔の前で優しく語り掛けました。それからしばらくおじさんは美人ちゃんのおなかをなでながら、おまたを調べましたが、まだまだなれないおじさんにはウサギさんの性別の見分けが出来ず、今度詳しい人に見てもらおう。そんなことを思いながら、そっと美人ちゃんを小屋の中へ戻しました。

そしておじさんは今度は、小屋の中で麦をほおばっていたヒゲゴジくんを抱き上げ、君は何処に行くんだろうね。。。

ヒゲゴジ君を自分の顔に近づけながら
「やっぱし、文吉ジイのところに行くのかな、、、。」


そんなことをつぶやきながら、チョコとララが初めて結ばれた満月の夜のことを思い出していました。


チョコとララのラブラブ姿をながめたあと、おじさんは家路に向かおうと振り返り「ぎょえー!」と大声をあげました。
おじさんの後ろには、まるで戦線より帰還したばかりのような姿のじいさんが、すさまじい形相でおじさんをにらみすえていました。

「おい、なにやってんだよ、うさぎじゃねえかよ。」
じさいさんはガラガラ声で、ぶっきらぼうにおじさんに話しかけてきました。
「な、なんだよ、文吉ジイかよ、びっくりしたー。一瞬兵隊さんの幽霊かとお思って心臓が止まるかとおもったじゃねえか。」
土木のおじさんは、胸をおさえながら爺さんに話しかけました。
「バカ野郎!誰が幽霊だ、このやろう!」
爺さんはギョロっとした眼玉に微笑を浮かべながら、おじさんに答えました。
おじさんが兵隊さんの幽霊と間違えたそのお爺さんは、おじさんの会社で文吉ジイと呼ばれている、工事部のお爺さんだったのでした。
文吉ジイは70歳近い現在も現役としておじさんの会社で頑張っている、スーパー爺さんでした。

その目玉はギョろっと大きく、太い眉毛は空に向かって見事に跳ね上がり、その口は異常なまでにでかく、一見人食い人種のような顔立ちをしていました。

その日爺さんは仕事を終えて、明日の材料をとりに会社に戻った所でした。
「なんだよ、垂れ耳うさぎじゃねえかよ」
久しぶりに会社に顔をだした文吉ジイは、そう言いながらチョコとララの小屋に顔を近づけ
「つがいかよこいつら」
今にもそのでかい口で、ぺろっと一飲みしそうな顔で小屋の中をのぞきこみました。

「ホーランドロップっていうんだよ、茶色が雄で白がメスだよ」
土木のおじさんはジイと話すときは何故かつられて言葉が汚くなっていました。
「こいつがオスかよ、おい!掛け合わせしねえのかよ」
ジイはチョコにめいいっぱい顔を近づけました。
「おい、食うなよジイ」
おじさんはいきなりジイがチョコをバクッとやりそうで心配になりました。


「ばかやろう、食うわけねえだろが、でも、可愛いなこいつは」
文吉ジイは顔に似合わず動物が大好きなのでした。
文吉ジイは津久井に自分の小さな資材置き場をもっており、そこで鴨やうずらなどひそかに飼育していました。
「俺も置き場でうさぎ飼ってんだよ、ミニうさぎってんだけどよ、店ででかくなったのもらってきたんだよ、ミニとかいってでけえから、聞いたら耳が小さいからミニうさぎだなんて店のやつが抜かしやがってよ。」
ジイはそう話しながら、その人食い人種のような顔に子供のような笑顔でおじさんに向き直りました。
そしてジイは、何かに気が付いたように、小屋の中にいるララとチョコを見て

「一緒にいるじゃねえか、かけたのかよ」
「ああ、今日成功したみたいなんだけどな」
おじさんはそう答えましたが、なんとなく頭の中で文吉ジイが子うさぎをおいしそうに丸焼きにして食べている姿が、うかんできてしまい。
「絶対ジイにはやらねえ、食うから。」
文吉ジイにきっぱり言い張りました。

「食わねえっていってんだろ」
「いや、食う、置き場のうさぎだって、鶉だって、いずれは食うんだろ。」
「ばかやろう食わねえってんだろ」
おじさんと文吉ジイは夜中のうさぎ小屋の前でそんな奇妙な会話を繰り広げていました。

おじさんは、ヒゲゴジ君を抱きながら、その日の会話を思い出してプっと噴出してしまいました。
「まさか、本当に食われることは無いと思うけど・・・」
おじさんは、笑いながらヒゲゴジ君の顔をじろじろながめ、そのヒゲダンスのような御茶目な顔を見ていて、いつしか彼のことが大好きになっていました。
「ヒゲゴジくんも美人ちゃんも、これから、旅立ちがまっているんだね」
おじさんはふっと寂しい気持ちをおさえながら、その日は家路にむかいました。
つづく

おまけに可愛いうさぎたちです↓


最後まで読んでいただきありがとうございます。このお話は2007年から約9年間、おじさんの会社でみんなから愛されていた可愛いロップイヤーウサギと土木のおじさんの楽しいエピソードです。
今では月に帰ってしまったウサギたちですが、可愛い写真に心和ませていただけたらうれしいです。

つづきはこちらです↓

前のお話はこちらです↓

おじさんとうさぎ目次です↓

土木のおじさんのWEBサイトです。
可愛いイラストなど公開しています^^↓


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