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おじさんとうさぎ#7「子ウサギ誕生とおじさん作の巣箱」

土木のおじさんは行きつけの料理屋さんでお昼をたべていて、その裏手の道路沿いに沢山のうさぎを飼っているおじいさんの話を聞きました。
うさぎと聞いては黙って入れないおじさんは、さっそく見学に行きました。
道に沿ってフェンスを無造作に張り巡らした小屋には、男の子組が数羽、女の子組が数羽、うれしそうに野菜をほおばっていました。

おじさんは、そのうさぎさんたちを飼っているおじいさんと親しくなり、しばらく話をしていました。
「金にもなんねーけど、近くの幼稚園の子供達が見に来るから、こうやって世話してんだ」
おじいさんはぶっきらぼうにそう話しながら、小屋のフェンスの修復をしていましたが、目元はやさしく微笑んでいました。

おじいさんの小屋では頻繁に穴を掘ってうさぎが脱走するらしく、一度は小屋からおじいさんの家の床下にトンネルをほって逃げだしたことなど話してくれました。
おじさんも会社にいる子うさぎのことを話し、おじいさんとすっかり仲良くなり、帰りにうさぎ小屋のとなりにあるおじいさんの畑から、野菜を分けてもらい帰ってきました。

さっそく新鮮な野菜をララと子うさぎ、そしてチョコにプレゼンしたおじさんは、それからしばらく考えごとをはじめました。

あのおじいさんのところでは、男の子と女の子の部屋に別れてたけど・・・
おじさんは満腹したようすの茶色い子うさぎの茶々丸を小屋から出して、ひざの上でなでながらそっと、茶々丸のお尻のあたりを静かにまさぐりながら、果たしておちんちんがついているか調べ始めました。

おじさんの目で見る限り茶々丸には小さなおちんちんらしき物体がついているように見え、おじさんにとっては小さな悩みでもありました。

「性格の穏やかなチョコなら大丈夫かな?子供のうちなら、うまく行けば雄同士も一緒に暮らせるって誰かいってたっけな・・・」
おじさんの頭には、おじいさんのところで見た男の子同士のうさぎたちの姿が浮かんできました。
「よし!」
土木のおじさんはそう言うと茶々丸を抱きかかえながらチョコの小屋を開け、その中に茶々丸をぽいっと入れてみました。

「さあ、どうなる・・・?」
おじさんは真剣にチョコと茶々丸の様子を見ました。

野菜をほおばっていたチョコは小さな訪問者にびっくり、一瞬とまどったのもつかの間、いきなり茶々丸めがけて突進してきたかと思うと、後ろから乗りかかって、愛のランバダダンスを始めてしまったのでした。
「あー、馬鹿チョコー!」
おじさんは必死にチョコを静止させようとしますが、チョコは興奮してとまりません。
「こらー、おい、息子だっていうのー、やめれー!」
おじさんはチョコを静止、あわてて茶々丸を抱きかかえてチョコの小屋から離れました。

「お前そんなにたまってたのかよ、あぶなく近親相姦するとこだぞ、それも相手は息子だぞ」
おじさんは小屋の入り口で、茶々丸を眺めながら立ちすくんでいるチョコに話しかけました。
びっくりしたのは茶々丸です。いきなり知らないおじさんに犯されそうになってしまいビックリ、相当恐かったらしく茶々丸はしばらく放心状態でおじさんのひざの上で、ぼけーっとしていました。

 「こ、こわかったよー、なにすんだよーおじさん」

「すまなかった茶々丸、でも君のお父さんなんだぞあいつは。そんなこと言ったって分かるもんじゃないか」
おじさんは茶々丸の頭をなでながら、何度もあやまり彼をみんなのもとへ戻しました。

茶々丸は今起きたこわーい出来事を一生懸命訴えるようにララのもとでうろうろしていましたが、しばらくして兄弟のもとへかけよりました。

兄弟たちも茶々の身体をくんくんしていましたが、やがてみんなでまた野菜をほおばり始めました。
生まれてひとつきちょっと、いつの間にか牧草を食べたり、高いところへンぴょンと飛び乗ったり。今ではすっかり達者になったチビたちを眺めながら、おじさんはこの子たちが生まれた日のことを思い出していました。

ララとチョコが初めて夫婦の契りを交わしてから数日、土木のおじさんは毎日注意深くララの行動をながめていました。
そんなある朝、ララは所かしこにカリカリ、カリカリ穴掘り行動をはじめたのでした。
「おー、これぞ、まさしく」
おじさんは以前からネットでうさぎの出産についてのサイトを研究しており、ララの穴掘り行動はまさに、赤ちゃん誕生への前ぶりでした。


さー、いよいよおよそ一ヶ月で赤ちゃんうさぎとご対面、おじさんはわくわくしすぎて仕事も手につきませんでした。
おじさんは早速ララと生まれてくる子供達に、巣箱をプレゼントしようと、またしても近くのホームセンターで材料を眺めてはあれこれ思案を開始しまっした。

巣箱といっても、いままでそんなもの見たことのないおじさんは、困った時のネットだのみ、あるブリーダーさんの日記から屋根つき豪華巣箱のイメージを完成させたのでした。
「これだ!これを作ってやろう。」
イメージが固まったおじさんは、早速巣箱作りにとりかかりました。

そのころのおじさんは、ララチョコ豪華ハウスを完成した経験から、すっかり大工仕事に自信をつけており、日ごろから「大工のおじさん」などと名乗っては、会う人会う人に、
「なに?○○が欲しい?よし、それじゃこの大工のおじさんが作ってやろう。」
そんなことを、語っていました。

しかし残念ながら、もともと大工仕事が大の苦手で、何を作らせても失敗ばかり、そんなおじさんのことを知っている友人は誰一人おじさんに、何か作って欲しいなどと頼むことはありませんでした^^

そんなおじさんでしたが、今回は見事な巣箱を一日掛けて完成させてしまったのです。

二階に休憩コーナーのある豪華巣箱!
おじさんは素晴らしいできばえに大満足、さっそく出来たての巣箱をララと生まれてくる子供達にプレゼントしました。

ところが、その巣箱がその後、お母さんとなったララママを困らせてしまう、大欠陥巣箱だったとはその時おじさんは、まったく気づいていませんでした。
欠陥については後日お話させていただきますが、おじさんの最高傑作巣箱を小屋のケージ脇にセットしたおじさんは、その中に巣材用に牧草をたんまり押し込み、ララの小屋の前にどっかと腰をおろしました。

「さあララ、おじさんからのプレゼントだ、素晴らしい巣箱だろー^^」
おじさんはララの動きををじっと見つめました。

探検マニアのララはさっそく小屋の中にどっかと現れた巣箱のあちらこちらを探索、おじさんはわくわくしながら静かにララの動きを観察していました。
やがて巣箱の回りを探索し終えたララはピョンと巣箱の中へ
「おーし、そうだララ、君はここで立派な赤ちゃんを産むんだぞー」
おじさんはガッツポーズ、しかしそんな喜びもつかの間、ララはなんだこんなのという感じで箱からピョンと飛び出すと、さっさと小屋のすみの彼女のお気に入り場所でごろっと寝そべりそのまま大爆睡、それからというものララは巣箱を単なる踏み台として使うのみで、まったく興味をしめしませんでした。

それから数日、おじさんは毎日巣箱の変化を観察しましたが変化はなく、ララは時々巣箱の中の牧草をつまみ食いするだけでした。
「この子、もしかして妊娠してないの?」
おじさんは少しがっくりしました。

人というものは期待している時はなかなかことは起きませんが、何とかは忘れたころにやってくる。
ある朝おじさんがララの小屋をのぞくと、巣箱の入り口付近に何とララが作ったと思われる牧草の目隠しが、さらに巣箱の外にたっぷりあった牧草は見事にからっぽ。
「うおーーーーー!」
おじさんは朝っぱらから雄たけびを上げ、そしてもしやと思いララの牧草入れに沢山の牧草を補充しました。

するとララは待ってましたとばかりに、牧草をわんさか口に銜えてぴょんと巣箱の中へ、また飛び出して銜えては巣箱の中へ、あっという間におじさんが補充した牧草を巣箱に運び入れてしまいました。
そんなララの一生懸命な姿におじさんも感動して
「よしララもっと入れてやるぞー、牧草はこの日のためにフレコンパックでたんまり買い込んであるんだ、いーっぱい使っていいからなー、ほれ、ほれ、ほれ」
おいさんは牧草がなくなっては追加、なくなっては追加、そんなことを繰り返しながら、せっせと巣材を運びいれるララの御手伝いをしたのでした。

いつのまにか巣箱の中にはたっぷりと巣材の牧草が形よくつまれ、ララは早朝からがんばった疲れからお気に入りの場所に寝転がって爆睡してしまいました。

「ララお疲れさま、もう少しで子うさぎに会えるな。」
おじさんの頭の中は期待がどんどん膨らんで、もう爆発寸前でした。

そして、それから数日後の10月に29日、おじさんが朝のえさをあげに小屋に近づいたときでした。
「うおー!」
おじさんは思わず絶叫、そして急ぎおじさんの土木会社の人たちの元へかけより
「生まれたー、赤ちゃんが生まれたー!」
おじさんはまるでわが子が生まれたかのように、大はしゃぎで会社内を駆け回りました。
ただ、生まれたといっても、赤ちゃんの姿はまだ見えません、
巣箱の中に突如現れた白い大きなのララの羽毛布団、それこそが赤ちゃん誕生の証だと、おじさんは前々から覗いていたサイトによって知っていました。
うさぎは出産のあとに、小さな赤ちゃんを暖めるために、自分の身体の毛をむしりとって羽毛布団を作る、おじさんは現実にその光景を目の当たりにして、感動のあまり涙がでてしまいました。

そしておじさんは小屋の別の場所に目をやりました。
そこには身体に血をつけて、自分の身体中の毛をむしりとり、ぼろぼろになったララの姿がありました。
「ララー、がんばったな、がんばったな」
おじさんは横になって休んでいるララをなでながらほめると、すぐに会社の下の田んぼに咲いているクレソンをたんまりとって来て、ララの小屋にどっかと入れてあげました。
いつもなら、すごい勢いで吹っ飛んでくるララも、さすがは出産直後とあってのそっと近づき、クレソンをバリバリ食べていましたが、しばらくするとまた横になって爆睡してしまいました。

「こんな感動をもらえるなんて、」
おじさんは改めて偶然迷い込んでしまったペットショップでの出会いに感謝しました。
そしてまだ姿は見えないララの羽毛に包まれた子うさぎの前で
「みんな健康に育ってくれよー」
そう願いをかけました。
おじさんが感動にしたっているとき、二階の小屋ではお父さんになったチョコが
「そんなの関係ねー!」
という顔でバリバリ牧草を食べていました。^^

つづく
最後まで読んでいただきありがとうございます。このお話は2007年から約9年間、おじさんの会社でみんなから愛されていた可愛いロップイヤーウサギと土木のおじさんの楽しいエピソードです。
今では月に帰ってしまったウサギたちですが、可愛い写真に心和ませていただけたらうれしいです。

前のお話はこちらです↓

おじさんとうさぎ目次です↓

土木のおじさんのWEBサイトです。
可愛いイラストなど公開しています^^↓


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