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第一章 戦時中の記憶 ●国民学校と戦火の中 その日、僕の足取りは少し緊張していた。国民学校(小学校)の入学式に向かっていたからだ。初めての体験はだれでも緊張する。同時にどこかわくわくする気持ちにもなるはずだ。それが、緊張感が先にくるのには理由がある。それは今日から僕の名前が変わるせいだ。 それまでは「岩田」という日本ではごく普通の名前だったが、学校では「金」と名乗るように父から命じられていた。それがなぜだか当時の僕にはわからなかった。 「お前の本当の名前は『金』という
その後も僕たちは、善基兄さんを捜し続けた。しかし、来る日も来る日も、大きな進展はなく、疲れ果てて家路に向かう毎日が続いた。 そんなある夜、みんなと別れ家に着いた僕は、一瞬目を丸くした。そこには今まで見たことのない一家が疲れ果てた顔で寝ているではないか。お客なのかと思ったが、様子をみると明らかに避難民だ。夫婦と幼い子どもが二人もいる。そこへ奥の部屋にいたハンメが姿を現した。 「お帰り、海守。善基さんの手がかりはつかめたかい?」 「ううん……それよりハンメ、あの人たちは