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第一章 戦時中の記憶 ●国民学校と戦火の中 その日、僕の足取りは少し緊張していた。国民学校(小学校)の入学式に向かっていたからだ。初めての体験はだれでも緊張する。同時にどこかわくわくする気持ちにもなるはずだ。それが、緊張感が先にくるのには理由がある。それは今日から僕の名前が変わるせいだ。 それまでは「岩田」という日本ではごく普通の名前だったが、学校では「金」と名乗るように父から命じられていた。それがなぜだか当時の僕にはわからなかった。 「お前の本当の名前は『金』という
●さよなら、祖国 永遠に続くのではないかと思われた戦時下の生活は、秋の終わり頃のある日、突然断ち切られることになった。 その日、僕と龍大は少しでも食べられるものを探そうと、収穫の終わった田圃でタニシを採っていた。これがまた歯ごたえがあっておいしくて、スープに入れたり、酢味噌であえて食べたり。小さいながら当時の僕たちにとってごちそうの一つであると同時に、貴重なタンパク源だった。 夜明けとともに頑張ったおかげで、その日は大量にタニシが採れた。 「これなら、永吉の家に