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●さよなら、祖国 永遠に続くのではないかと思われた戦時下の生活は、秋の終わり頃のある日、突然断ち切られることになった。 その日、僕と龍大は少しでも食べられるものを探そうと、収穫の終わった田圃でタニシを採っていた。これがまた歯ごたえがあっておいしくて、スープに入れたり、酢味噌であえて食べたり。小さいながら当時の僕たちにとってごちそうの一つであると同時に、貴重なタンパク源だった。 夜明けとともに頑張ったおかげで、その日は大量にタニシが採れた。 「これなら、永吉の家に
やがて砲声も収まり、僕は元の場所へ戻ると静かに眠りについた。初めは腹が立ったおじさんのおかげで、こうしてぐっすり眠ることができたのだった。 「おい、起きろ……。早くしたくしないと、またバスが行っちまうぞ」 おじさんの声に目を覚ますと、あたりはすっかり明るくなっていた。僕の体には薄汚れた毛布が掛けられている。 「これ、おじさんが?」 「朝方みたら、あんまりにも寒そうにしてたからな……」 「ありがとうございます!」 僕は深々と頭を下げると、慌てて毛布をたたんでおじ