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コロナに負けない!台湾の街角の食堂たち、持ち帰りメニューに存続をかける

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はじめに~台湾でイートインができなくなった!



5月16日にコロナ警戒レベルが3級(厳しい方から数えて2つ目)に格上げされてから、台湾では飲食店の店内で飲食ができなくなってしまった。

外食やカフェ巡りが楽しみの筆者にとって、これは深刻な打撃。どうしたものかと思っていたら、各飲食店で様々な工夫を凝らした外帶(持ち帰り)メニューが一気に増え、今は台湾中が、持ち帰り飲食の最先端の様相を呈している。

台湾ですら逃れることができなかったコロナ禍。不要不急の外出が難しくなった今、さまざまな飲食店の頑張りをお伝えしたい。

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(淡水のカフェ「光子豆豆」お店は開いているが、客は店内で飲食ができない)


1.弁当店は比較的影響が少ない


台湾の街角で時折見かける「便當店」。主菜+2〜3品のおかずを選ぶタイプのお店が多いが、このタイプの店舗は比較的影響が小さい。イートインも可能な店がほとんどだが、もともとは外帯メインであり、お店側も対応しやすい感じだ。

もっとも、コロナを警戒して来店を避ける人も多いので、Food Pandaや Uber Eatsなどの外送(宅配)サービスを利用する人が多いのだろう、ピンク(フードパンダ)や緑(ウーバーイーツ)のユニフォームを着たバイク軍団が頻繁にお店に来る。

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2.お手軽メニューのお店も何とか踏ん張っている


弁当店以外にも、外帯利用が多い店舗はそれなりに健闘しているようだ。台湾の小吃は、イートインメインの店と、外帯中心の店がある。例えば、涼麺や麺線、早餐店の多くは、外帯中心だ。

筆者は、個人的に内用(イートイン)が好きなので、このような店でも、店内でゆっくり食事をすることが多いのだが、多くの客は持ち帰る前提で店に来るので、以前と比べて大きな支障はなさそうだ。強いて言えば、配達サービスに力を入れている店は引き続き元気がある印象だ。

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(筆者自宅近くで一番おいしい涼麺の店・老魯記。75元で好きな種類の麺が選べて、トッピングの具材も豊富)

3.イートイン中心の食堂はどうしてる?


それに比べて、対応が難しいのが内用(イートイン)中心の一般的な小餐廳だ。こちらは、持ち帰りしづらいメニューがメインだったり、そもそも店内でゆっくり食事を楽しむことに重きが置かれていたりして、外帯だと魅力が薄れがちなところが多い。

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上の写真にあるちょっといい感じの小さな食堂。こちらは、淡水でも屈指のレベルを誇る隠れ家イタリアン食堂「兎宅子」。我が家から徒歩3分という、さながら我が家の台所のような店なのだが、どうやら苦戦を強いられているようだ。

何せ、メニューの中心がパスタ。しかも、台湾でありがちなちょっとべちょべちょした麺ではなく、日本人も納得できるアルデンテのパスタを出してくれるので、筆者もときどき食べに来ている。駅までの通り道に位置するのでいつもお店の様子をちらちら覗いているのだが、正直言って閑古鳥が鳴いている(まあ、裏通りの隠れ家なので、普段から大混雑にはならない)。

持ち帰り向きのメニューを新たに開発するのも容易ではない。この店では、従来のメニューをほぼ変えずに、持ち帰り容器に入れて販売している。こういう店で可能なサービスは、ドリンクの無料おまけ。もともとセットメニューで紅茶を出していたが、外帯では紅茶に加えて麦茶やコーヒーも選べるようになった。もちろん、それでお客が急増するわけではないが、コロナが落ち着き、内用が可能になったときに、常連さんにきちんと戻ってきてもらうためには、意味のある工夫だと思う。

↓このミートソースはかなりおいしい

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外帯にすると、下の写真のように見栄えはやや落ちるが、それでもおいしいパスタがそこそこの値段で頂けるのは、大変ありがたい。セットのスープもときどきメニューが変わって、しかも毎回おいしい。

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4.カフェは営業できてる?


筆者は、無類のカフェ好き。カフェでおいしいコーヒーをいただきながら、のんびり過ごすのを至上の喜びとしている。しかし、コロナ状況下では、カフェも内用禁止の例外ではない。

当然、どのカフェでも外帯コーヒーを買ってもらうことに注力することになる。そのせいか、一般的に外帯利用が少ないと思われる夜間には早々とお店を閉めるカフェが多い。

下の写真は、先日訪れた淡水のスイーツ&カフェ「果然工坊」で購入した持ち帰りコーヒー。ハンドドリップで淹れてもらったもので、フルーティな香りと味わいが特徴的でとてもおいしい。ただし、自宅からバスで行く店なので、家に持ち帰った時はアツアツとは言えない状態だった。

つまり、カフェのほうでも、自宅やオフィスに近くの客にいかに足繁く会に来てもらうかに注力しなければならない訳だ。

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では、それ以外にできることはないか?そこで取り組みが進んでいるのが、コーヒーのドリップバックを積極的に売り出すというもの。豆や焙煎に自信があるカフェでは、自宅でおいしいコーヒーを手軽に淹れてもらうことでお店のことを忘れらないようにするのも一つの手だ。

このドリップバックを通販するお店もあるようだ。一番規模が大きい取り組みは、萬華のたくさんのカフェが協力して作ったグループ「萬華老城咖啡香」に加盟する11軒のカフェが持ち寄ったドリップバックを1袋ずつ詰め合わせたセット商品が販売されたのだ。このうち数軒は筆者も訪れたこともあるが、それ以外は未訪。比較的頻繁に訪れていた萬華にもまだまだ知らないカフェがたくさんあるのだ、と驚きつつ、しばらくはこれらのお店自慢のコーヒーを楽しむことにしている。

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飲んでみると、1軒1軒豆の種類やフレイバーが違うのが感じられて面白い。このような柔軟な企画は、台湾のほうが盛んにおこなわれるように思う。

ちなみに、このグループでは、ドリンクを病院や役所などコロナ対策の最前線で頑張る人たちに無料配布する活動もしているようだ。ちょっとした親切かもしれないが、自分たちができる活動を無理なく続けていく様子を見ると心がじんと温まる。

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5.高級レストランも負けてはいない


最後に登場するのは、街の中でも少しグレードの高いレストラン。ちゃんとしたレストランは本来、素敵な雰囲気のお店でおいしくて高級な料理を食べるのがだいご味なので、もともとは外帯には向いていない。

しかし、手をこまねいていたら、売り上げは下がる一方。実際に、外国人にも人気のある高級大型レストランの閉店が目立つようになっている。

このような中級・高級レストランの場合、もともとお店で提供している比較的高い料理を持ち帰れるようにすることが多いが、中には、リーズナブルな弁当を販売するところもある。

例えば、淡水の「福來餐廳」では、高級オードブルに混じって、リーズナブルな各種お弁当も販売している。筆者が購入したのは、なんとたった100元の京都排骨便當。排骨の味付けがワンランク上で、正直これで100元なのは申し訳ないくらい。それでも、「やっぱり福來はお弁当もおいしいね」と思ってもらうことで、コロナ後に客を取り戻すのに一役買いそうだ。

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さいごに~台湾人の柔軟性に感嘆


台湾で第三級の防疫規制が敷かれてから立った数日で、ほとんどの飲食店の完全外帯対応の体制は出来上がった。台湾では、国家=政府の規制には素直に従うという傾向が日本よりも強く、政府にケチをつける飲食店はほぼなく、むしろ新しい状況でも商売ができるように素早く動いたことが非常に目立った。

この状況を、美しい官民協力のように称賛するのはやや行き過ぎの感があるが、いずれにせよ、チェーン店から小規模な個人食堂まで、柔軟に工夫を重ね、少しでも売り上げを維持しようと努力している様子を見ると、「何とかコロナ禍を乗り切ってくれ!」と祈らずにはいられなかった。


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