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【考えてみませんか?】泣いている赤ちゃんを寝かしつける方法について

※ 下記の文章を書くにあたっては、赤ちゃん育てに関する私の師匠の
迫きよみさん(子育て支援者のためのだっこサイト だっこroom https://dakko-room.net を運営する宇治子育てを楽しむ会代表、一般社団法人ジェイスの立ち上げメンバー)のFacebook上の投稿を、少しでも多くの方に参考にしていただければと思って、ご本人の了解を得て、かなりの部分、参考にし、組み合わせ、一部引用も改変もしつつ、再構成させていただきました。

 赤ちゃんを何とか静かに寝かせつけたい、というのは、小さな赤ちゃんをケアする人ならだれでも願うこと。
 一人で寝付く赤ちゃんもたまにいますが、多くの赤ちゃんはなかなか寝てくれず、かわいい赤ちゃんでもケアする人を苦しめます。
 そういう状態を減らすために、こんな画期的な研究があったと、メディアが取り上げ、多くの人がシェアしています。

こちらが報道のもとになったであろうプレスリリースの内容です。

赤ちゃん研究は本当に難しくて、少なくて、よく取り組んで下さったと思います。一方で、その内容についての報道をよんでみますと、しっかり吟味しなければならない面もあると感じています。多くの人は、報道しか読まないからです。

ですので、この文章は、報道に基づいて書きます。

「最も効果があったのは抱っこ歩きで、5分間行った場合には全員が泣きやんで約半数が眠りました」

・・・確認しておきたいのですが、これは、約半数は眠らなかったということですよね。藁をもすがる思いのケアギバーとしては、その2分の1弱にかけるわけですけれど。

  確かに、経験的に言っても、おんぶでゆらゆらしていたり、だっこで散歩に出たりすると、寝るに寝られずにいた赤ちゃんは心地よさそうに眠りに入ります。

 運ばれる赤ちゃんは、安全に運べるよう親に協力する輸送反応を示すと言われていて、それを活用するとのことです。

 本来は、「おだやかで安心できる環境でとんとんと(どんどんではなく、さするように優しい刺激を与えるという意味です)たたいてあげているうちに眠りにつく日常を獲得する」といいのですよね。でもそれがなかなかできないことが多いと思います。私自身も、自分の子どもや孫の子育てもおんぶやだっこでの寝かしつけが多かったし、そうしている方は少なくないでしょう。この研究のような歩き方でなく、ゆった~りゆらゆらしたり(ロッキング)、自然な体の動きに沿って揺れるのはどうなのでしょうね。赤ちゃんもカクンと寝落ちするというよりは、気持ちよ~くまどろむのではないかな。
 
 一方、「現代の赤ちゃんは、出産や日々の生活の変化から、体に歪みやコリがあってなかなか床で穏やかに眠ることが難しくなっています。親たちも、本来の赤ちゃんの穏やかな眠りを誘導するやり方を知る術なく親になっています」(迫さん)。それに、親の体も華奢(きゃしゃ)になってきていますよね。だから、これはある程度は致し方がないなあ、体がしんどいときに寝付くまでずっと穏やかな気持ちでゆったりと抱っこし続けるというのは大変だけれど(交代要員がいるといいなあ)、抱っこやおんぶで眠れるなら、泣かし続けるよりもそれでいいのかもしれないなあと私は思います。

 さて、懸念されるのはここから先です。
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 「一方、眠っている赤ちゃんをベッドに寝かせると起きてしまう、いわゆる『背中スイッチ』と呼ばれる現象が知られていますが、今回の実験でも3分の1の赤ちゃんは寝ついた後にベッドに寝かせると起きてしまいました。
 そこで心電図を解析したところ、眠っている赤ちゃんは背中がベッドにつくタイミングではなく、抱っこされている体が親から離れ始めた時に心拍数が速くなって覚醒し始めることが分かりました。
 霊長類の赤ちゃんは常に親の体にしがみ付いているため、自分の体が親から離れた時に危険だと反応していることが考えられるということです。」

 「また、ベッドに寝かせても起きなかった赤ちゃんと起きてしまった赤ちゃんを比べたところ、寝かせ方などに違いはなくベッドに置く前の赤ちゃんの寝ている時間に差があることが分かりました」

 「アプリが、その時の赤ちゃんの状態に合わせて今、こういう育児をすると寝かしつけが成功しやすいですよってアドバイスしてくれる、そういう技術を考えまして、動作原理の特許を出願しています」
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 確かに、そろそろ下ろそうかなと思ったら、その気配だけで!赤ちゃんは敏感に察しますよね。

 もし、研究によって、寝かしつけの原理がわかったのだとしたら、

 赤ちゃんの体が親から離れないように密着したまま静かに下ろして、そのまましばらく密着して待つことで寝かしつけるという
 昔ながらの子育ての技術を、親が獲得するためにはどうしたらいいか、
ということを考えてもいいのではないかと私は思うのです。あるいは、
 かつての時代よりも下ろすことが難しくなっているのはなぜか、
ということを考えたほうがいいと思うのです(私は抱っこやおんぶの仕方の変化や、親子の体の変化が関係していると思っていますが、別の投稿で書いていますので、今回の投稿では扱いません)。

 それよりも、
下ろすまでの時間をスマホで測るアプリに頼るという方向に行くのでは、
 ケアギバーの育児技術を高めることにはつながりませんし、
 かつてよりも下におろすときに赤ちゃんが泣きやすくなっているという現象の説明にはつながりません。


そこで、【上手く寝かしつけができるケアギバーを増やすためにはどうしたらいいか】を考えてみました。
(下記にリンクをつけた迫きよみさんの文章を中心にしつつ、自分の意見も加えてまとめさせていただきました。「」内は迫さんの言葉です)

1)泣く赤ちゃんは悪い赤ちゃんではなく、何か不都合があることを一所懸命に訴えている赤ちゃんです。今回泣いていた理由はみんな眠かったからなのかもしれませんが、どんな理由であっても早歩きをすれば泣き止むとしたらそれでよいのでしょうか。訴えを取り下げて寝てしまう、という状態にするのではなく、まずどうして泣いているのか、「泣いている理由」がわかる力をケアギバーが身につけるために、経験者が伝える仕組みを作りたい。

2)泣いている理由が、眠いから寝ぐずっているのだとわかったら、まず、「寝やすくなる」条件(静かで、適温で、適度な空気の流れがあって、強い匂いがせず、テレビやスマホなどの明るい光がある過刺激な部屋から急に暗い部屋に連れていかれたりしないなど)を整えることを伝えたい。

3)「寝やすくなるようにサポートするために、赤ちゃんが寝入りやすくなるポーズで抱きしめ」たり、「心地よい揺れや、心地よい声かけや」いつも同じ子守「歌などを歌っ」たりすることを教えたい。
(迫さんのご指摘にもあるように、映像に出てくる無表情な親子、からだを安心してケアギバーに預けられないだっこや首を支えないだっこ、せかせかとした歩き方など、あかちゃんがゆったり出来ない条件の下で研究しているのが、とても気になりました。とにかく眠ればいい、というものでもないと思うのです。赤ちゃんには、元来、優しくホールディング(ウィニコット)された胸の中や温かな布団の中で眠ってほしいのです。緊急事態だ!と身体を固くして眠りに落ちるというのは「まどろむ」とは質が違う眠りに思えます)。
 
4)もういいかなと思っても、ちょっと待って、「ぐっすり寝入っ」て、「赤ちゃんの体がリラックして、ずっしり重くな」ったら(時間を測るのではなく、その重さを感じられるようになることが大切です)、また、手足が温かくなったら、体を密着させたまま、「今から体は離れるけど 気持ちはあなたにあるよー」と心の中で伝えて、「気を残す」のです(東北地方の古い言葉では、やさしい意味で「だます」と言うようです)。このような「赤ちゃんが起きない布団へのおろし方」のコツを、全てのケアギバーが身につけられるようにしたい。

 寝かしつけ方をたくさんの人に伝えてきた経験のある迫きよみさんは、「いくらアプリで心拍数を図っても、きっとおろし方が下手だったら起きちゃいますよ。それより、上手な下ろし方を教えてあげる方がずっといいと思う。その方法をちゃんと伝えたら、みんな上手になるもの」と言います。私自身も上手いと言えるほどではないけれど、練習したら、若い方から褒められるほどにはかなりうまくなりました(へへ)。赤ちゃんの体調が悪いとき、環境が変わったときなどは、下ろせないこともありますけれど、それは特別なときです。



5)赤ちゃんにも協力してもらうために、普段から、赤ちゃんの体が固まらない、凝らないようにしておく必要があります。ずっと抱っこ紐に入れたままの抱っこをし続けるような、首が坐る前から手で支えないで縦抱きするような、まだ座位が獲得できる前から無理に身体を固定して座らせておくような、コンテナといわれる固定型の育児用品に長時間入れておかないことの大切さを訴えていきたい

 さて、これからの時代、

① 寝始めた赤ちゃんのからだにスマホを近づけて、心拍数を測るのか、
② ケアギバーが子育てしながら次第に育児技術を身につけていくのか。


 子育てはどちらをめざすのでしょうか。

 私は、赤ちゃんとケアギバーが「目に見えない」つながりを感じ取って、次第に互いに調律(情動調律 by ダニエル・スターン)するかのように感覚を学び取っていくことが、愛着関係の形成にもつながる大事なコミュニケーションだと思うのです。

 <私はあなたを下に置いたからって置いてきぼりにはしないよ>というメッセージをしっかり何度も何度も伝えること(そして寝たら遠くに行ってしまって、大声で泣くまで放っておくようなことをしないこと)、<あなたが嫌いだから置くんじゃなくて、あなたがゆっくり自分で眠れるように安心できるように育てようとしているんだよ><私もゆっくりしないと、あとであなたのケアをするのが大変になってしまうから協力してね>と、毎日毎日伝えていくこと。そして同時に赤ちゃんが全身で伝えようとすることを、しっかり聞き取り、受け止めようとすること。

 それがどうしてもできないというときに、たまに使う方法として、早歩きやアプリは役立つかもしれません。でも、今、子育て中のケアギバーの皆さんを見ていると、迫さんのご指摘の通り、「一見便利なようなスマホのアプリ」に、逆に使われているようなのです。「授乳のタイミングとか時間とか、上手にあくまでも目安として活用できている人はあまりいなくて」、実際はその指示に「縛られて不安になっている人の方が多い」ようなのです。

(実は、海外からやってきた義理の娘も、産後直後からアプリを使っていました。日本語がまだ十分にできず、知り合いもいない中で情報源をスマホの中に求めたのは必然だと思います。が、私のアバウトな孫育てを見ていたからでしょうか。途中でやめました。その方が楽と気がついたようです。日本人であっても初めての育児をする親にとって十分な情報がないのは同じ。スマホに頼ってしまうのは必然だからこそ、情報を提供する側は相当に慎重でなければならないと思います)

 アプリが開発されたら、「寝入った可愛い寝顔を見てうっとりするのではなくて」、あと何分経てば起きなくなる!と、ずっと待つことになってしまいそうです。それは辛くありませんか?いつ起きるんだろう、起きたらまたいつ寝てくれるんだろうか、と冷や冷やしながら待つことになりませんか?

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「赤ちゃんも生物ですが、同時に人間です。
 『数字を見てベストな方法で扱う』のではなく、
 『共感して寄り添う』ことで、
 脳の神経がものすごい勢いで繋がり発達していく最初の時期に
 より多くの幸せ回路が繋がって、
 人間社会やこの世界に対する信頼、安心を育」むことができる
(孫を育てている息子の武田裕熙の、迫さんの投稿をシェアしたFB投稿のコメント欄のことば(下記))のではないかと、私も思うのです。

 「現代人は幼少期にそういう原体験がない人が多い」(同上)かもしれません。そうすると、どうしても、合理的に子育てすればいいと思ってしまいがちです。

 だからこそ、赤ちゃんに触れることのできる時期に、赤ちゃんの力でその感覚を呼び覚ましてもらうことが必要な時代なのだと思います。


 この研究は、とても興味深い、行動の原理を明確にしていこうと試みた研究の一つだと思います。赤ちゃん研究はとても難しいのです。だからこそ、この結果を、親子の温かい絆づくりに役立つように考察して欲しいなあと思います。

 かつて、若者対象の商売が盛んになった時期がありました。今は、だんだんその年齢が下がってきて、子育て世代、それも赤ちゃん育てを支援することが「商機」(同上)になっています。赤ちゃんや子育てを便利にする製品を開発することは、「資本主義的には正解かもしれないけれど、種としての人間がどんどん無機的になっていく」(同上)のではないかと懸念してしまいます。杞憂であればいいのですが。



注1)こんなにいい方法があったのに水を差すのか、という反応もあるかもしれません。多くのママパパに影響を及ぼす可能性のある研究だと思いますので、別の視点からの解説をすることで、ご自身で選択していただけるように、書いてみました。

注2)寝かしつけ方について、迫さんがもう少し詳しく書いてくださいましたので、シェアします。

私たちはみんなで学んで赤ちゃん親子を支えていかなければなりません。どうしたらいいでしょうか。知恵をください。 まずシェアしましょう。 子育て支援の関係者は印刷して支援の場に貼って、みんなで学ぶ時間を作り、頭に叩き込み、実際に体で身につけて...

Posted by 武田 信子 on Thursday, September 15, 2022


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