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教育虐待:鳥栖両親殺人事件から…  田舎でも教育虐待は起きるのか?

2023年9月30日、またまた、朝日新聞デジタル有料会員向けの記事です。
佐賀の教育虐待の事件について、前回よりも長い記事です。

ごく一部ですが、紹介しますね。

「成功を収めた人たちのなかには、教育虐待を受けていたのに、むしろ親に感謝するというようなことを言ってしまう人もいます。そういう人たちは、そもそも自分が虐待されていたことに気づいていない。学校の部活の体罰でも同様の傾向がある。教育虐待は日本中にあふれています」

 「故ジャニー喜多川氏による性加害の問題にも重なります。結果的に上昇することができた人などは、自分が被害を受けたことを許容してしまう。勉強も、楽しくできれば虐待にならないが、多くの親は、その方法を知らない。2019年の民間のインターネット調査では、子どものいる456人のうち7割が子どものしつけにおいて体罰が必要と答えている。勉強も同じと考えてしまうのでしょう」


でも、全文掲載はできないので、
読めない方のために、ここには、記事とは全く違う観点のコメントを書いておきます。


田舎でも教育虐待は起きるのか、ということについてです。

実は、教育虐待やエデュケーショナルマルトリートメントは、
地方都市や離島のような過疎地域でも起きています。
先週、北海道新聞の記者さんにこんなふうにお答えしました
(記事になるかな?)

1)東京都文京区や港区のような過半数が私立に進学する地域で起きる教育虐待もあれば、

2)偏差値の高い高校や大学が地元にない過疎地だからこそ、地元の唯一の進学校をめざしたり、地元を離れてよりよい学校を目指すように親が働きかける教育虐待もあり、

3)郊外から通勤圏内の中心地の有名校をめざすように仕向けられる教育虐待もあります。

つまり、ピラミッド型の構造のあらゆる層において、より上を目指す矢印が描かれ、それぞれの矢印で子どもたちは頑張っているのです。

地方の図書館に行くと、地域随一の高校の生徒たちがずらりと並んで受験勉強をしていることがあります。貧しさからの脱却、地方からの脱却を目指すかのような学校教育が行われ、右肩上がりの経済をめざすように頑張っています。

生徒たちは概して素直で素朴で、一所懸命に勉強に取り組んでいます。
先生たちも同じです。いい人たち、なのです。

そういう地域の学校では、たとえ自殺などの問題があっても見事に緘口令が敷かれるので、地元で小さなうわさにもなりません。
生徒個人と家族の問題とされて、その背景にある価値観や文化が問われることはまだあまりないのです。されて、と書きましたが、関わっている人たちは、本当に個人の問題だと思っていることもあって、自分たちの関わり方を振り返ることが困難なのです。

でも、教育虐待のハイリスク家庭の周りには、エデュケーショナルマルトリートメントが行われるハイリスク文化、社会的マルトリートメントが起きてしまう地域のハイリスク要因が見え隠れしています。

そしてまた、実はローリスク家庭であっても、ハイリスクの学校文化、地域文化の中で、次第にハイリスクになってしまう、という構造もあるのです。

それぞれの地域のハイリスクの文化に気づかなければなりません。
そして、その範囲は、日本全国に広がっていて、そういう価値観を持たない人たちが集まっているコミュニティにでも行かなければ、その空気に覆われてしまっているのです。

明日、日本心理臨床学会大会自主シンポジウム「社会的マルトリートメントと心理臨床」(企画者、武田信子)という企画で話題提供をする際に、そのことにもちらっとふれます。やっと心理臨床の世界に「社会的マルトリートメント」の概念が伝えられる、初めての大会です。


私たちの気がつかないところで、今日も、一人以上の子どもたちが自殺しています。隠しても隠し切れない事態になってきました。私たちは、気がつかなければなりません。


追記)この投稿に対して、佐賀県武雄市「よりみちステーション」代表の小林由枝さんがコメントを書いてくださいましたので、ご紹介させていただきます。

教育虐待は、都会のエリート家族だけでなく、田舎にもあります。

写真は、武雄ののどかな風景です。このような環境で育った素朴で純粋な子どもだからこそ、大人からの教育虐待にも素直に従ってしまうのかもしれません。

佐賀県内に公立の中高一貫校ができて以来、県立中や佐賀市内の私立中学校を目指すべく小学校からの塾通いが増えました。

スポーツ分野でも、小学校低学年から1つのスポーツに絞り込んで、夜遅くまで練習に励んでいます。目標はスポーツ推薦、オリンピックでしょうか…

鳥栖で起きた事件は衝撃的でしたが、地元ではあまり話題にあがりません。

なにか触れてはいけないようなことのように扱われている印象です。

成功に向かうレールから距離を置いて子どもを育てるには、なかなか覚悟も必要ですが、確認し合える仲間を増やしつつ、少しずつ地域の価値観を変えていきたいところです。


余談)
全身が写った宣材写真を2時間以内に下さいと言われたのですが、そんな写真を撮ったことはなく、スマホで撮った写真をいろいろ送ってみたのですけれど、結局、ずいぶん前に、家のダイニングルームで息子に撮ってもらった写真が使われました。そろそろ新しい写真を撮らないと、年齢詐欺になってしまいます…。

#社会的マルトリートメント #教育虐待 #朝日新聞 #佐賀県 #鳥栖
#両親殺人事件  


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