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自分で学びを選び、学び方を学ぶ 【週刊新陽 #155】

4月10日(水)から授業が始まっています。

単位制が導入されて以来、新学期がスタートした時期に見られる光景が今年もありました。それは、休み時間や授業が始まる直前に教室を探し歩く生徒の姿です。

新陽高校の単位制カリキュラムでは、生徒は固定教室で授業を受けるのではなく授業ごとに教室を移動します。特に1年生はまだ校内の教室配置が分からないので迷子になりやすく、休み時間に私が校内をうろうろしていると「〇〇教室ってどこですか?」と聞かれることもしばしば(校長だと分かって質問しているかは不明・笑)。

でも、この混乱も各授業の初回だけなので、1週間で落ち着きます。

ちなみに先週、学校が作った表示が間違っていたらしく(生徒の皆さん、ごめんなさい!)、「△△の授業、どこ行けばいいの?」と教室を探している3年生の集団を見かけました。「もー、間違ってるじゃん!」と言ってはいましたが、ひどく慌てるでもなく怒るでもなく、「仕方ないなあ」という感じの対応力はさすが。先生のミスにも寛容な生徒たちで助かってます。


自分でつくる自分だけの時間割

先週号では学校生活のベースとなるハウスの話をしたので、今回は、新陽の単位制カリキュラムについて書きたいと思います。

1年次ではまずコンパス別の授業に参加し「学び方」を学びながら、必修科目の修得を目指します。コンパスには「クエスト」「パイオニア」「アカデミア(アドバンス・ジェネリック)」があり、出願時に選んだコンパスで国語・数学・英語・社会・理科の5科目を学びます。

いわゆる学力や習熟度ではなく、自分がどのように知識やスキルを習得したいか、どんな風に学習すると学びに向かいやすいか、という観点で授業クラスが分かれるのが新陽の特徴。

さらに2年次以降は、科目ごとにコンパスが選べたり、自分自身の学びのスタイルや学びたい内容に沿って授業を選択できたりして、自分だけの時間割自分の学び方を極めていきます。

この仕組みの根底にあるのが、新陽ビジョン2030『人物多様性』のアクションプランやカリキュラム・ポリシー(教育課程の編成及び実施に関する方針)にも書かれている『生徒の数だけ学びがある』という考え方。

多様な生徒がいる社会で、誰一人取り残されない個別最適な学びの実現に向けて試行錯誤する中で、一つの解として辿り着いたシステムです。

主体性を伸ばす仕掛け

個別最適な学びを実現する学習システムは、同時に、生徒の主体性を育むことを意識して設計されています。

生徒が自分自身を確立するためにも、そして社会性を身につけていくためにも、基盤となるのは主体性。これから先、自ら道を切り拓いていけるように、自分で考え、自分で決めて、自分で行動する力を付けてほしいと願っています。

昨年の秋、65期と66期(今年度の2・3年次)の生徒が次年度に向けて科目選択を行いました。約1ヶ月に渡って、自分のやりたいことや進路希望、得意不得意を考え、先生や家族、友達、ときには先輩にも相談しながら、自分だけの時間割を作っていくプロセスそのものが、何よりの主体性を育む教育活動になっていると感じます。

そして今、そうやって選んだ授業に参加する生徒の様子を「自分で選んだという意識があるからか、主体的に取り組んでいます。授業に集中しているように思う」と話す先生が複数います。生徒が「選んだ科目」は教員からすると「選ばれた科目」であり、先生側に良い責任感と緊張感も生まれるようです。

ちなみに、生徒が自分で授業教室に行くという身体的な動きも、実は当事者意識に影響しているのではないか、と思っています。待っていれば先生が代わる代わる来てくれるのではなく、授業を受けるために自分が動く。そのアクションで参加意識が生まれたり、気持ちが切り替わったりすることもあるのかもしれません。

履修と修得を積み上げる

4月13日(金)は、全校で基礎力診断テストを行いました。

年に2回行われるこのテストは、ベネッセが提供している基礎学力を測るためのもので、生徒は国語・数学・英語の3科目を受験します。また、長所短所や適性を分析するアンケートもついています。

高い点を取ることがゴールではなく(実力を発揮して高い点が取れれば、もちろんそれはそれで良いのですが)、自分の実力や学習課題を知ることが一番の目的。結果を受けて、生徒自身が今後の自分の学習計画に活かしたり、教員がアドバイスを行ったりすることが大事です。

基礎力診断テストに限らず、新陽では次に繋げるための振り返りを行うことがとにかく多いです。授業や行事ごとにリフレクションフォームを入力したり、メンターとの個人面談や教科担任との面談も頻繁にあります。過去・現在・未来をつなげて考えることで、生徒は自分の経験を学びに変えます。

なお、たった一度のテストで自分の評価が決まってしまうことにプレッシャーを感じ、定期テストがない新陽を選んで入ってくる生徒も少なくありません。

でも、定期テストがない代わりに単元ごとに理解度を確認するテストがあったり、テスト以外のレポートやプレゼンテーションで学習成果を測ったりするので、生徒は「思ってたのと違った・・・」「定期テストより大変!」と言うことも(笑)。

また、アウトプットだけでなく、日々の授業や課題への取り組みなどプロセスも評価の重要な要素で、単位の修得に大きく関わります。この「修得」、そして「履修」の要件は科目ごとにシラバスで示され、最初の授業でも説明されます。(授業の出席により「履修」が認められ、その学習の成果が科目の目標から見て満足できると認められる場合に、履修した単位の「修得」が認定されます。)

単位を取ることが目的ではないのですが、生徒には、どうすれば単位が取れるのか、どうなったら単位を落としてしまうのかを考えることで、自分が学びの主体であることを意識してもらえたら、と思っています。

実際、今の2〜3年生を見ていると、その感覚は学年制の時より強いように感じます。日々の学びを積み上げて、一つひとつの単位をしっかり取っていく単位制の仕組みが、当事者意識を生みやすいのかもしれません。

【編集後記】
ある朝、イエローハウス1年次の教室でメンターの先生がホームルームをしているところを覗かせてもらうと、終わりの号令の後、先生が「じゃあみんな今日も1日がんばろう。行ってらっしゃい!」と。それに頷きながら、荷物を持ってバラバラと教室を出ていく生徒たち。ハウスとしてのホーム感が既にあり、とてもいい雰囲気でした。

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