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がんと共生する社会へ。ワールドキャンサーデーに考える「がん教育」のススメ

2月4日はワールドキャンサーデー。

世界中の一人ひとりが、がんに関する意識を高め行動を起こすことを目的として、「がんのためにできること」を考える日だそうです。

この日を中心とした1週間をWorld Cancer Week と定め、多様な立場の人々が一緒に、がんにまつわる医療や社会課題を考えるイベント『CancerX Summit』のプログラムに、新陽高校からも生徒が参加しました。


CancerX教育 〜みんなで考えよう、これからのがん教育の進め方〜】と題したセッションには、10名の現役高校生と、がん教育を進めている方々が登壇。ディスカッションが進む中で「当事者意識」というキーワードが見えてきました。

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日本人が一生のうちにがんと診断される確率は2人に1人(2018年データ)。

私にとって、このデータはリアルです。4人家族のうち、母と私ががんに罹患した経験がある。つまり家族の2人に1人ががんと診断されているのです。

母が子宮頸がんになったのは、私が大学生の時。お腹が痛いと言って病院に行くとそのまま入院し、そのあと手術や抗がん剤投与のための入院を繰り返したと記憶しています。

20年以上前、がんはまだ怖い病気というイメージがありましたし、抗がん剤の副作用もかなりつらそうで、大変な闘病生活でした。また、あとになって母がかなり進行したがんであったことを知らされ、「一時はあまり長くは生きられないと思った」と聞きました。

幸い、難しいと言われた母の手術は成功し、予後も良く、いまも元気に暮らしています。

また、私の姉は小児看護を専門とする看護師で、小児がんの子どもたちの緩和ケアを研究しています。日本だけでなく海外におけるがん治療のこと、また心のケアや寛解したあとの社会復帰の大変さなど、何度も聞いたことがありました。

つまり、私の周りにはがんに関する情報が決して少なくなく、知る機会は多々ありましたし、母の闘病も、私ががんを自分事(じぶんごと)として捉えるには充分な経験だったはずです。

そんな私でも、2011年に自分が乳がんであると分かった時、「まさか、がんになるなんて思っていなかった」し、なんの準備も知識もありませんでした。

(がんが見つかったときのことや治療のことは、こちらのnoteに書いています▼)


何を言いたいかというと・・・、がんに対して当事者意識を持つことは結構むずかしいということ。同時に、だからこそ『がん教育』は大事だと思っていること。

小中学校では今年度、高校では次年度から、新学習指導要領の中で『がん教育』が明記され一層の推進が求められています。

『がん教育』の目的は、日本人にとって身近ながんを知ることで自分や家族ががんになった時に必要以上に恐れないことや、がんを一つの切り口として健康や命についての意識を高めること、また、がんと共生する社会への認識を持ち偏見や働きづらさを減らすこと、などでしょう。

ただ、学校で取り組む時にがんを学ぶことを主目的に置くと、「時間が確保できない」とか「指導できる人がいない」という理由で、取り組むハードルが少し上がってしまいそうです。

なので新陽高校では、教員も大人も一緒に学ぶものとして『がん教育』を捉え、「がんを学ぶ」だけでなく「がんで学ぶ」取り組みをやれたらいいね、と相談しています。

保健体育はもちろんですが

・がんが発生するメカニズムや最新治療
・正しい情報を得るための情報リテラシー
・がんに関わるお金(治療費や保険、税金)

などなど、様々な教科で学ぶ切り口がありますし、教科横断でPBL(Project-Based Learning)もできそうです。私たちにとって身近なはずのがんは、誰にでも自分事(じぶんごと)になる問いが立てられるテーマ。

アイヌや宇宙など、さまざまなテーマをメインに置いて生徒自身が問いを立てて取り組むPBLに挑戦してきている新陽だからこそできる『がん教育』を、模索していきたいです。


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▲2012年5月5日AM5時、東京・築地にある国立がんセンター中央病院の病棟から撮った写真。あれからまもなく10年。今年5月の検診で問題が見つからなければ「卒業」予定です。定期検診がなくなるとまた当事者意識が薄れていきかねないので、生徒たちと一緒に学んでいこうと思います。

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