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遺贈という贈り物☆寄付がつなぐ想い 【週刊新陽 #38】

まもなくクリスマスですね。そして、この時期になると聞こえてくる「サンタクロースはいるか?」という問い。皆さんも質問したり、されたりしたことがあるのではないでしょうか。

さて、ここに「サンタクロースの正体」について書いてある2冊の本があります。

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1冊は、松岡享子さん著『サンタクロースの部屋』。この本の「はしがきにかえて」の中に、こうあります。

子どもたちは、遅かれ早かれ、サンタクロースが本当はだれかを知る。知ってしまえば、そのこと自体は他愛のないこととして片付けられてしまうだろう。しかし、幼い日に心からサンタクロースの存在を信じることは、その人の中に、信じるという能力を養う

そしてもう1冊は、近内悠太さん著『世界は贈与でできている』。

サンタクロースという装置によって、「これは親からの贈与だ」というメッセージが消去される・・・(中略)親に対する負い目を持つ必要がないまま、子は無邪気にそのプレゼントを受け取ることができる。(中略)
僕らは「サンタクロースなんかいない」と知ったとき、子どもであることをやめる。そして「この世界には無数のアンサング・ヒーローがいた」と気づいた時、僕らは大人になる
※アンサング(unsung)・ヒーローとは、世に知られることのない英雄。

それにしても、サンタクロースは本当にいないのでしょうか・・・?


道を拓く人へ〜奨学基金の創設


この度、学校法人札幌慈恵学園・札幌新陽高校は1億円の奨学基金を創設しました。故 藤田紀郎様のご厚志と故 廣田聰様のご尽力により遺贈いただいた資金をもとに、2022年度から運用を開始します。

そしてこの基金により、建学の精神を受け継ぎつつ新陽ビジョン2030を実現するために、『本気で挑戦し自ら道を拓く人』を応援する新たな奨学金制度を作っていきます。

藤田紀郎・廣田聰記念奨学基金について

藤田紀郎様について:
昭和34年早稲田大学卒業。北海道日産勤務を経て、家業(備品卸および不動産業)を手伝い、引継ぐこととなりフジタ不動産を設立。昭和59年には株式会社リストを設立。平成14年まで35年以上にわたり不動産会社を経営。昭和40年に札幌不動産リスティング協会を立ち上げ(創立時メンバー)、札幌の不動産業の発展に尽力し、ここ10年ほどは同協会の名誉相談役であった。札幌慈恵学園の常任理事であった廣田氏とは、札幌不動産リスティング協会を通じて、家族ぐるみでの親交があった。令和3年2月13日ご逝去。

廣田聰様について:
昭和44年北海道大学法学部法律学科卒業。同年三和銀行入行。昭和57年、家業を継ぐため退社。同年株式会社みたか商事(札幌)に入社し、昭和60より同社代表取締役。公職として、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会理事、公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会理事、公益社団法人北海道宅地建物取引業協会副会長、公益社団法人北海道宅地建物取引業協会札幌支部支部長、札幌家庭裁判所調停員(平成14年4月〜平成22年3月)などを歴任。平成27年7月国土交通大臣表彰受賞。平成27年6月より本学園理事、常任理事。令和元年11月18日ご逝去。

【基金の目的】
教育再創造の推進と、日本の寄付文化醸成の後押し

【基金の使途】
奨学金

【奨学金の企画ならびに運営に関する委員会メンバー】
鶴井 亨 株式会社北海道新聞社 常務取締役
渡辺 由美子 認定NPO法人キッズドア 理事長
対木 孝成 IAYインターナショナルアカデミー 専務取締役 副学院長
石井 吉春 北海道大学公共政策大学院 客員教授(札幌慈恵学園 常任理事)
赤司 展子 札幌新陽高等学校 校長

【企画委員会事務局】
阿美 晴彦 札幌新陽高等学校 教諭・総務部長
高石 大道 札幌新陽高等学校 教諭・コミュニケーションセンター長
札幌慈恵学園法人本部

〜本奨学基金に関するプレスリリース〜

お金では買えない一生の宝物


この奨学基金が創設されたのは、ひとえに本学園の常任理事であった廣田聰さんのご尽力によるものです。廣田さんは2019年11月に逝去されましたが、その直前まで、新陽高校のことを心配し、支えてくださいました。

遺贈寄付くださった藤田紀郎さんは、廣田さんにとって尊敬する先輩だったそうなのですが、その藤田さんに前校長の荒井優さんを紹介したのが2018年。

私もその時には既に新陽に関わっていたので、なんとなく覚えているのが「経営の立て直しではなく、子ども達のために使ってくれるなら」という藤田さんの言葉です。教育や人材育成にも関心が高い方だとお聞きした記憶があります。(藤田さんは早稲田のOBで私にとっても大先輩ということで、廣田さんが話してくださいました。)

そしてこの藤田さんのご遺志と、その橋渡しをしてくださった廣田さんのご遺志を本校につないでくださったのが、廣田さんの奥様の廣田美貴子さんです。

先日、基金創設のお礼とご報告を兼ねて訪問させていただきました。

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周りの方から「ボランティア夫婦」と呼ばれるほど、ボランティア精神がある廣田夫妻。美貴子さんも札幌ユネスコ協会で熱心な活動を続けていらっしゃる方です。

廣田聰さんがいらっしゃったら基金の使い道についてどう仰ったでしょうと、美貴子さんにお伺いしてみました。

奨学金として使ってもらえるのはうれしい、と言ったと思います。詳しい使い道は学校にお任せするので校長先生ぜひ考えてください。ただ、生徒さん達が良い経験をするための機会を与えてあげられたらいいなと思ってます。

たとえば、新春恒例となっているユネスコカレンダー市という活動があり(現在はコロナ禍のため活動を縮小しているそうです)、新陽の生徒さんもボランティアに参加してくれていました。力仕事もあるので高校生がいてくれるとこちらとしては大変助かるのですが、高校生からも「楽しかったのでまた来年も参加したいです!」と言ってくれたことがありました。


また、ユネスコではカンボジアに寺子屋を作るプロジェクトがあります。学校に行けないカンボジアの子どもたちのための識字プログラムとして始まった寺子屋ですが、その後、子どもだけではなく大人も利用できる村の集会所のような役割を果たし、さらには寺子屋を自治運営することで就業の機会ともなるなど、村全体の生活改善に役立っています。

その現地に私は3度行ったことがあり、次に行くときは夫も一緒に行こうと話していました。そして夫は、「その時は新陽の生徒も2・3人連れて行きたい。」と言っていました。

大人の私でも最初に行った時はショックだったので、きっと高校生なら尚更いろいろと感じることがあるだろうと思います。自分が思っていた当たり前が当たり前ではない人たちや場所がある、そこで知ることや感じることはお金では買えないものです。そういう経験は一生の宝になります。

スタディツアーや留学など、若い時にこそ自分の殻を破って、いろいろ挑戦させてあげたいですね。


【開催レポート】 寄付の教室スペシャルプログラム in 新陽


11月29日・12月6日・12月13日の放課後、『寄付の教室 in 新陽と名付けたワークショップ(WS)を行いました。

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初日の『寄付の教室 コモンズ投信バージョン』でお金のことを考えたり社会課題を学んだりしたあと、生徒一人ひとりが社会課題に取り組むNPOなどを調べます。そして最終日には、校長である私の寄付先を選ぶために、生徒が応援したい団体をプレゼンしてもらうというもの。

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生徒たちが推薦してくれた団体はこちら↓

・児童養護施設の職員をサポートするチャイボラさん
・全国こども食堂支援センターむすびえさん
・10代の居場所と出番をつくるカタリバさん
・頼れる人が周りにいない子どもたちをサポートする3keysさん

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参加した生徒は1年生3名と2年生1名で、他の団体と比較したり、寄付したらそれがどう使われるか調べてあったり、データなども使いながら、それぞれ工夫したプレゼンを用意してくれました。

どこもとても大切な活動をしている団体でしたし、何よりどの生徒からも「応援したい」「この社会問題を無くしたい」という想いが伝わってきたのでとても悩んだのですが、最終的にこども食堂を支援しているむすびえさんに決めました。

むすびえさんを推した生徒のプレゼンはスライドなどはなく、スピーチだけの4分間。前半は準備してきた原稿を読みながらの発表でしたが、後半、「おばあちゃんが子ども食堂をやっていて、自分も手伝ったことがある。」という経験談から自分の言葉で語ってくれたときの言葉が特に力強かったのです。

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「子ども食堂は、子ども達がご飯を食べるという目的だけではなく地域のコミュニティの場としても大事な役割を果たしている。こういう場所が続くことで、寂しい想いをする子ども達が少なくなるといい。」との主張は、他の生徒たちにも響いたようでした。

最後に感想を聞いてみると、4人とも「参加してよかった。」と言ってくれました。

「実は参加するつもりはなかったのですが、誘われて申し込みました。でも、自分で提案するという機会を経験できてよかったです。」
「人前で話すことや、初めての人と一緒に何かをするのは得意じゃないので、先生に勧められたけど当日まで参加するか悩みました。でも、悩む必要なかったな、と思うくらい、参加してよかったです。」
「お金に関することを学べてよかったです。いろいろな団体を知ることができたし、今回の活動ができてよかったです。また参加したいです。」
「最初の回は休んでしまって、途中から参加して大丈夫かなと不安だったけど、いろいろな団体のことを知ることができて、他の人の発表も聞けてよかったです。」

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【編集後記】
お話を伺っているとき、廣田美貴子さんが「ボランティアは人のためにやってるんじゃないんです。自分のためなのよ。」とおっしゃっていました。
寄付は、自分ではやりたいけどできないことをやってくれていることへの感謝。ボランティアは、何か役に立ちたいという気持ちを果たす。「今日より少し良い明日」のために自分の想いを託すギフトなのかもしれません。

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