飛沫
夕暮れの中、私は一人歌を歌います。心はいつだってからっぽでいっぱいだ。なので私は、涙をくみ上げます
遠くで誰かが鳴らしたリズムが聞こえます。
1歩。2歩。3歩。
耳には波音しか入ってきませんが、私の足元からしっかりと聞こえています。
そのリズムに合わせて私も歩きます。
足の裏から伝わる音と、私の足音とが共振して、地の底から砂が湧き上がります。
夕暮れは、今日はもう池の中に潜んでしまって、船に乗っていた少女は、大きな音を立てて沈んでいきました。
3回目の音は小さくて、もう私のいるところからは聞こえませんでした。ただ、水飛沫が上がったのが見えただけでした。
クジラが、大きな声で池に向かって叫びます。
「私は、貴女を赦します」と、
それでも私はどうしてか、涙をこらえきれずに、ゆっくりと前へ進み続ける夢を見ます。
言葉はいつだって、物語を作ります。だから私は、いつまでも言葉を吐き続けます。それが私の未来となり、現在となるので。
だからといっては何ですが、貴女の言葉も私に混ぜさせていただけませんか。今は、それだけが私の望みです。
それでも私はどうしてか、涙をこらえきれずに、ゆっくりと前へ進み続ける夢を見ます。
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