いもに

部屋の中の鍋の中に居座る野菜の兄弟が、早く食べてねと私をにらんで目を離さない。
私はその視線を感じながら、どうすることもできず、たださらに取り分けられた自分の分のジャガイモを齧り、咀嚼し、反芻することしかできなかった。

ジャガイモの新芽には毒があるらしい。
だが私はその毒を知らない。
毒が本当にあるのかも知らない。
ただ、毒があるかもしれないという恐怖心で今日もジャガイモに、包丁の直角を突き立てる。

ごとごとと煮られて、融け合って、二人の兄弟は一つに混ざり合ってただの黒ずんだ液体と化していた。

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