「海のリテラシー」(創元社)読書メモ(途中まで)(3/17更新)
面白い本です。いくつかのポイントを書き出してみます。
P18「17世紀半ばから18世紀後半のイギリス商船が毎年20〜30隻に1隻、すなわち3〜5%は難破したと推定しており、レイフ・デイヴィスは19世紀前半のそれを4〜5%と推計している」結構高いもんです。
P28「漂流するとすぐに神籤を引いてお伺いを立てる近世日本の海難者とは大きく異なる特徴である。ヨーロッパの船乗りが神に祈るのは、嵐で船が沈没する、あるいはもう助かる見込みが潰えた、そう確信されたときである」注釈に日本の例があるのでこちらもどうぞ。
P30 「精彩な」→精細?
P31「このように、ヨーロッパ文明圏にせよ境界領域にせよ、本国との間のコミュニケーション回路は開いていたし、本国も了解しその中に組み込まれていたゆるやかなルールが共有されていた」スチームパンクとかを舞台にした作品で活かせそうな話。
P42「情報網が発展途上にあった帆船の時代において、貿易は情報伝達と不可分の関係にあり、民間の商船は積荷だけではなう情報を運ぶことをも期待されていた」これもこういった時代をテーマにしたゲームとかに活かせそうな話。
P46「いかなる船も、到着したら、まず何を措いても船長自ら総督を訪ねるのが通例である」シーンとして様になるというか。
P54「18世紀初頭、海賊は大西洋世界の一大脅威となり、ユトレヒト条約後には、海賊の情報が再三にわたって新聞に報じられている」海賊の起源自体はかなり古いと思うけど、新聞が出てくる時代でも影響力がある、ということ? ちなみにユトレヒト条約は1713-15なので、ルイ14世が死んだりしたころです。
P62「彼らが神に救いを求めたのは、聖書に描写される海が混沌と謎の象徴であることも反映しており」当時の世界観。
P64「古来、船乗り特有の迷信が数多く存在しているのも、起きた現象に対して彼らなりに理由を見出そうとしたから、あるいはこれから起こりうる不吉な事態を防止しようとしたからだった」ファンタジー的にはこれが実効を持つと処理してもよいのかも。
P75「また一方でそのできたばかりの新しい国家が、実際はまだまだ未確定の隙間だらけの社会であり、そこに才覚のあるものが侵入する余地が残されていたということも考えられる」後ろ盾のない人が身を立てやすい時代、というのはあるものですね。
P81「アルジェリアに生まれただけでは『海民』とはいえない。海に出て、荒波を経験し、その先にある広い世界を見る力を持ったものこそが『海民』である」
P87-89 オーストリア・ロイド社の説明。19世紀の街を表現する際の参考になりますね。
P89「加えて、東インドのニュースをロンドンよりパリが先に知る危険がないという安全性もアピールした」とはいえパリの代わりにウィーンが知るだけなのでわ…? という感じがしましたが、そこはライバル関係の薄さというものなのでしょうか。
P91 当時の海洋貿易の規模を知ることができるいい資料ですね、このページ。
P104 オーストリアのあまり高くない国際競争力に涙します…
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