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ポケットモンスター ココ

程よくギャグあり、ロケット団が陰の功労者だったり、きちんとテーマがあって綺麗にまとまっているのでかなり良作だと思いました。


以下ネタバレあり。


序盤から人の良さそうな研究員たちが出てくるが、エーテル財団のようなニオイを感じます。所長がCV山寺宏一で所長室は立ち入り禁止…ますます怪しい。と思ってたらそのまさかで、自分の理想の達成のためにジャングルを破壊しポケモンの命を軽視する劇場版の中でもかなり最悪なタイプの敵でした。10年前には人の命を救いたいという目的があったようだが、ココの本当の親である前所長を事故死させたあとは研究の成果を立てて自分を認めさせたいという狂気に駆られた存在になってしまっています。

形見のネックレスが癒しの泉のデータが入ったものであること、GPSを付けられうっかりとはいえ敵を泉まで案内してしまったこと。ココの気持ちを考えると胸が苦しくなりました。
ココの両親は泉に辿り着くものの、ポケモンの棲家であることを優先して計画を凍結させているので、ココが自己嫌悪に陥ってしまうような出自ではなかったのは救いでした。ポケモンとの共生を望むのは、ポケモンであるザルードとうちゃんに育てられたことだけではなく、両親から受け継いだものもありそうですね。

ポケモンに育てられた人間という新たな切り口からの映画で、本当の親子とは、親子愛などの方面から宣伝をされてきた記憶のある本作品ですが、テーマとしては人間のエゴによる環境破壊(これは「セレビィ時を超えた遭遇」を彷彿とさせますが、今作にもセレビィが出てくるのは意図的なものでしょうか。)も含まれており、本質はココのアイデンティティの確立なんだろうなと思いました。
サトシに出会い自分と同じような姿をした人間をたくさん見ることで「オレはなんだ?」と自分の正体に疑念を抱き始めます。ザルードとうちゃんに問い詰める様はさながら反抗期のようにも思えますが、アイデンティティがわからないことによる苦悩からくる方が大きいのでしょう。(アイデンティティといえば「ミュウツーの逆襲」が思い浮かびますね。育ての親ではないですがポケモンが父親代わりというと「結晶塔の帝王」がありますし、過去作からいろんなエッセンスを取り込んだ作品と言えるのかもしれません。)

技は使えず人間としての体を持つものの、ポケモンの世界で育ちポケモンと話ができるココ。
ココはポケモンとして生きるのか人間として生きるのか最後には結論がでるのだろうかと考えつつ見ていましたが、最終的にポケモンザルードであり、人間であり、とうちゃんの息子というアイデンティティを確立させます。
アイデンティティを確立させた上で、ポケモンと人間との架け橋になりたいと自ら旅に出ようとします。巣立ちや自立の物語でもあったんですね。

最後の方で長老が、ザルードが力を振りかざして神木や食べ物を独占していたことをジャングルに侵略しにきた人間の行為に例えて間違っていたと反省し、ジャングルの他のポケモンたちと共生することを選ぶシーンがあるのもいいですね。街のシーンではポケモンと人間とが仲良く過ごしている姿が描かれていますし、共生も一つのテーマだったのかもしれません。

いろんなテーマが綺麗に混ざり合っており、過去作のエッセンスも感じ取れて近年のポケモン劇場版の中でもかなり出来がいいものだと感じました。

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