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荒廃した未来の地球で「火星人」と『THE CUB』の追いかけっこ生活

 現実でも、混沌としてきた現代。いつの日か、こんな世界が実現してしまうのかもしれない。2種類の人類。「火星に逃げた人」と「地球に残された人」。今回は、そんな未来の人類のお話。



📃|『THE CUB』は逃亡劇?

 『THE CUB』は2024年2月29日NintendoSwitchPlayStation4/5Steamでリリースされた2Dパルクールアクションゲーム。本作はSEGAの『ジャングルブック』、『アラジン』、『ライオンキング』などのレトロゲームに影響を受けているとのこと。私は知らなかったので後でプレイ動画を探して確認したが、アクションの滑らかさは確かにそれらを感じさせるものだった

▲『ライオンキング』のプレイ動画

 本作は戦争や生態系の破壊などが繰り返され、放射能に侵され廃墟と化した地球が舞台となっている。荒廃する直前に、超裕福層の人々は火星へと逃げ、地球に残された多くの人々は朽ちていくしかなかった。そんな中、環境に適応し、新たな人類として生きているのが主人公の少年・Cubカブ。少年がいつも通り過ごしていると、火星から調査隊がやってきて、この環境で生きている”サンプル”として少年を捕まえようとするところから壮大な追いかけっこが始めることになる

後ろに飛行物体

📃|同じ世界観を持つ前作『Golf Club Nostalgia』

 開発はセルビアのインディーゲームスタジオ・Demagog Studioで、本作と同じ世界感を共有するのが『Golf Club Nostalgia』だ。本記事ではこれを「前作」とする。

 前作は今作とは逆側の「火星側の人間」が主人公となっている作品で、火星に逃げた人々の間では危険を承知で「荒廃した地球でゴルフをする」という娯楽に興じている様が描かれている。本作と前作は時間軸として重なっている部分も多く、2つの作品で同じシーンが別視点で描かれていたりする。コースが室内であったり、途中に特殊なギミックを乗り越えたりと、普通のゴルフゲームとは一線を画す作品。プレイ中の画面は最低限の表示しかなく、世界観に没入できるようにか、無駄なものが削ぎ落とされている

ひっぱりゴルフィング

 一見すると「ポストアポカリプスの世界でゴルフをさせる」というアイデアだけ先行して、設定は後付けなんじゃないかって感じるのだが、むしろストーリーが先行な感じでキッチリと作り込まれている。1ステージ毎に一言だけ語られる断片的な文章が、クリア後にイラスト付きですべてまとめて見れるのだが、そこでストーリーの全容が理解できたときの「やられた感」は心にズシンとくるものがある

ここがめっちゃ好き

 本作をプレイする前から世界観が同じということは知っていたものの前作をやってなくて、今作をクリア後に「プレイ動画をちょっと見ておくかー」と思って出てきた動画を飛ばし飛ばしで油断しながら見てたたから、かなり面食らってしまった。これはキチンと自分でプレイして、苦労の末に見るべきエンディングだと思ったので、もしまだやってない方がいるのであればプレイ前後どちらでもいいのでプレイすることをおすすめする。

 全35ステージ。中盤からは広いステージが増えて、精密なショットが求められるので少し難易度が高めかも。普通のゴルフと同様に規定打数があり、それをオーバーするとステージをスキップすることができるようなので苦手な人もぜひ。メニューの表示が遅かったり、1打1打でキャラクターの移動が発生するからテンポが悪いとか、正直もっとサクサクとプレイさせて欲しさはある。ちなみに自分は、初見で約2時間程度でクリアできた。

参考までに

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⭕|程よい難易度の気持ちの良いアクションと基本的に快適なリプレイ性

 本作は直球のアクションゲームになっており、本作特有のアクションは特にない複雑さを排除し、純粋なアクションを楽しめるのは意外と良かった。難易度もそこまで高くなく、単純にクリアするだけなら『スーパーマリオブラザーズ』とかと同等のレベルなので、アクションゲームの入門編みたいな感じだ。

栄えていた名残と思われるオブジェクトが良い感じ

 失敗しても、すぐに近くのチェックポイントから再開し、繰り返しプレイするリプレイ性に関してはあまり文句はない。しかし、場面によっては復活後にすぐ操作しないと即ゲームオーバーになるようなこともあり、その辺りは調整して欲しいなとは思った。

 「難易度は高くない」と先に書いたが、トロフィーや実績を意識すると少し難易度が上がる。「1度も死なずにチャプターをクリアする」「6分以内にチャプターをクリアする」といったものは結構神経を使うものとなっており、簡単めな最初のチャプターですらちょっと練習が必要なレベルの精密な操作が求められるようになる。

ノーミスは本作の最難関となるが、取得率は比較的高め

⭕|世界の解像度上げる収集物と地形や環境を利用したギミック

 道中には人が存在していた痕跡があり、そこからどのようにして今の状態になっていたのかの背景を知ることができる。メールのやり取りや雑誌、テレビに残された映像など、「人間が確かに生きていたこと」を感じさせるのがとても上手い作品。ボロボロになった人工物と明るいネオンが切ない

痕跡

 また、何ヵ所かに隠された道や場所があり、時には敵をも利用して道を開く必要がある。一応隠されてはいるが、発見するのに複雑な手順が必要なものはなく、取るべき行動の選択肢はかなり狭め。なので、自力でも比較的簡単に解けると思う。一部は先に進むと戻れない場面もあり、その場合はチャプターの初めからやり直しになるので、ご注意を。まぁ、やり直しが発生してもそんなに大変ではないと思うけど

下に何かありそう

💬|一部機種では日本語対応してないかも?(追記あり)

執筆時点ではバージョン「1.00」なので、今後改善される可能性があります。

※バージョン1.01にて日本語対応済み

 私はPS4版をプレイしていたのだが、おそらく日本語対応をしていないようだった。なので、途中でGoogleレンズで翻訳したりしながら、なんとなく世界観やストーリーを感じていたが、正直全然理解できてない。

 他にプレイした方の話やYoutubeでプレイ動画を検索すると、なんと日本語対応しているようだった。改めて何度も設定画面を確認したが、言語選択には「日本語」は存在していない。𝕏で調べたら、少ないが同様に日本語対応してない旨の嘆きがあったので、もしかしたらPS4版では日本語対応していないのかもしれない

 Youtubeで見かけるのは外国の方のプレイ動画が大半で、日本人のプレイ動画はPS5のものばかりでハッキリとしないのだが、少なくとも自分の環境は未対応だった。PSStoreなんかでは日本語対応してるっぽいこと書いてあるし、PS4とPS5で対応言語の違いなんてあるのか信じられないのだが、なんなんだろう。PS4の人は一応覚悟しておいた方が良いかも。

▲設定の言語選択の項目

7/17 追記:

 バージョン1.01にて、対応言語が追加。ようやく日本語対応されたことを確認した。やったぜ。これからプレイする人も、安心して欲しい。


❌|物足りないパルクール感

 本作の宣伝文句として「パルクールアクション」という単語が使われているのだが、パルクールという感じはあまりしないスピード感はなく、私がイメージしているような派手なアクションもないため、割と普通のアクションゲームという印象が強かった。一応スライディングで隙間をすり抜ける、棒やツタに掴まって次の足場に飛び移る、といったアクションは用意されているが、特別な気持ち良さは感じなかった。ボタンをタイミングよく押してポンポンと簡単にかっこよくステージを駆け抜けるようなギミックがもっとあったら良かったのかもしれない

 余談だが、「パルクールのゲーム」というと『ミラーズエッジ』が個人的に好きなので、これベースに期待してしまったからこそ、余計に物足りないと思ってしまったのかもしれない。「2D横スクロールアクション」と「FPS」を比べるのがそもそも間違いだと思うが。


⭐|サクッとできて、良質なアクションゲーム

 クリアまでは約4時間とかそれくらいだろうか。謎解きのようなものもほぼなく、迷いなく進み続けられるので、一部を除いてストレスは溜まりにくいように感じた。悪く言うと単調だが、短時間でクリアできる作品としては大きな問題ではないと思う。

このあと、驚きの展開

 先に書いているが、前作を知っているから刺さるようなエモさもあり、「ここが前作のあのシーンと繋がっているのか」と、楽しむポイントが増えるので、可能であれば触っておくと良い。ただ、私がそうだったように未プレイでも問題ないので安心して欲しい前作から世界観を引き継ぎ、ストーリーを補完させ、そのさらに向こう側を描き切ったのは素晴らしい挑戦。ゲームのジャンルを変えながら別視点で物語を描く、というアイデアもすごい。

 トロフィーはプレイ技術が必要なもの以外は解説動画を参考に収集していれば簡単にコンプリートできるので、そういう点でも嬉しい。自分は2日でできたけど、1日でも余裕でコンプリートできると思うので、トロコン初心者はぜひ挑戦してくれ

攻略情報はそんなにないが、サクッとコンプリートできた

P.S.|プレゼントしていただいたもずとはゃにぇさんに、この場を借りて感謝を

 今回本作をプレイできたのは、もずとはゃにぇさんのおかげと言って過言ではないので、僭越ながら紹介をさせていただく。

 もずとはゃにぇ男女(蛙鳥?)コンビのゲーム実況者。現在はYoutubeを始めとした様々な動画配信サービスで活動している方々で、ゲーム配信やプレゼント企画などを行っている。コツコツと実績を積み重ね、企業案件やゲーム関連イベントで公式配信をしており、2024年7月には8周年を迎える。おめでたい。
 私が別のメディアで本作に興味を持っていたタイミングで『THE CUB』のプレゼント企画が行われていたのを発見し、ダメ元で応募したら運良く当選した。

うれしい

 様々な新作ゲームのプロモーション配信は、新しいゲームの発見とゲームの雰囲気を掴むのにうってつけなので、インディーゲームに興味がある人は特に注目しておいても良いかもしれない

 

 それでは。

 おわり。


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