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一人称視点のパルクールアクション『ミラーズエッジ カタリスト』で駆け抜けたガラスの街

 「パルクール」というものをご存知でしょうか?

 パルクールとは、フランスの軍事訓練から発展して生まれた、走る・跳ぶ・登るといった移動所作に重点を置く、スポーツもしくは動作鍛錬である。

 Wikipediaより抜粋。日本では「現代の忍者」とも言われるようなアクロバティックな動きが特徴です。私は約20年前に公開された『YAMAKASHI』という映画でパルクールを知り、虜になった一人です。今日は、そんなパルクールを取り入れたゲームのお話。

『ミラーズエッジ カタリスト』とは

 2016年6月9日PS4/XboxOne などで発売された一人称視点のアクションアドベンチャーゲーム2008年に発売された『ミラーズエッジ』の続編となるが、主人公の「フェイス」以外は新キャラクターとなり、ストーリー自体も特に繋がりはない4gamerインタビューでは以下のように語っており、あえてナンバリングタイトルとしていないらしい。そのため、前作をプレイしていない人でも特に抵抗なくプレイが可能となっている

 我々自身は,「Mirror's Edge Catalyst」が単なる“リブート”ではなく,“リバース”(Rebirth,生まれ変わり)であると思っています。

 舞台となる「ガラスの街」は複合企業に支配された街。住人はマイクロチップを内蔵した腕輪によって常に監視をされ、自由を奪われている。ストーリーはフェイスが出所するところから始まる。フェイスは闇の仕事を請け負い走り回る「ランナー」となり、黒幕「クルーガー」の支配から住人を解放させるべく、強大な敵に立ち向かっていくことになる。
 落下して死んでしまった際のペナルティは特に無く、恐れずに大胆なアクションを行うことができる。死を恐れずにプレイできるのは、アクションゲームが苦手な人には嬉しいポイントだろう。
 ちなみに、主人公のフェイスのモデルはプロデューサーのフィアンセだそうだ。本作では大幅に造形がキレイになり、乃木坂46山下美月ちゃんを目付きを悪くさせたようになっている。えっ? 似てない?
 それにしてもタイトルをカタカナで書くとダサさがあるな(気付き)

基本的に一人称視点なので、あまり顔を見る機会がないが割と好き

前作と違い、自由度がケタ違いにパワーアップ

 前作は各ステージをクリアしていくだけの、いわゆる一本道なアクションゲームでした。もちろん、その中でもゴールまでの道筋は自分の意志で模索して進むことができたが、たかが知れているレベルだった。
 本作は大きな1つの街が舞台となり、オープンワールドチックな作りとなった。そのおかげで、あらゆるルートを開拓することができ、近道をしたり、色んな所に無理やり登ったりと十人十色なアクションができるようになっている。

見える範囲全てではないが、かなり広い範囲を駆け抜けることができる

 収集要素も超パワーアップ。前作では各ステージにある隠しアイテムを「30個」集める程度だったものが、本作は複数の種類があり、合計で「702個」まで膨れ上がっている。さらにサイドストーリーや様々なミッションも用意され、すべて遊びつくそうとすると大変な一作となっている。

ゲーム中、自分のプロフィールからデータの確認も可能

 前作では片手で数えられるレベルだった戦闘も、本作では何回でも戦うチャンスがある。数種類いる敵兵をボコボコにしよう

良い制服

 オリジナルのコースを作ってマップ上に配置したり、任意のチェックポイントを作って他のユーザーがアクセスして履歴を残すなどのちょっとしたオンライン要素もある。チェックポイントについては、2021年1月現在もアクティブなユーザーが存在することを確認することができる

特別面白くも難しくもないこのコースを探してみてください

 あ、そうそう。前作ではストーリー部分がアニメ調になっていたが、本作では普通にリアルな等身のムービーになっている。個人的には前作のムービーはそんなにだったので、地味に嬉しい。

こちらの動画から拝借しました

他では味わえない、一人称視点の激しいアクション

 「一人称視点」で、さらに「パルクール」ができるというイカれたことを実現した元祖である『ミラーズエッジ』は伊達ではない。一人称視点で走ったり、高いところからジャンプしたりは他のゲームでもあるかもしれないが、着地の際に前転したり、壁走りをしてターンしてジャンプといった視点が激しく動く、容赦ないアクションが『ミラーズエッジ』の強みであり、最大の魅力。終盤は崩れる建物を駆け抜けるといったシチュエーションがあり、アクション映画のような手に汗握る展開が非常に面白い
 人によっては酔ってしまうこともあると思うので、その点は注意して欲しい。私は前作で5時間連続プレイを毎日しているような生活で鍛えられていたので、酔うことはほぼなかった。

実際にプレイ動画を見てもらうのがわかりやすい

丁寧に作られたプレイヤーへの気遣い

 本作の難点はあらゆる方向に行けるために起きてしまう「進むべき道がわからない」という壁だ。しかし、それを上手く乗り越えている。ストーリー中はもちろん、マップで指定した場所にピンを立てれば目的地までの行き方を視覚でわかりやすく表示してくれる。その通りに行けば間違いなく到達できるし、道を間違えてもカーナビのようにちゃんとルートを修正して目的地まで導いてくれる
 以下のように赤くマーキングされたパイプや排気ダクトを進み、赤い線で走る道筋も直感でわかりやすい。あまりアクションゲームが得意でなくとも、指示に従って進めば簡単にクリアすることができるし、迷子にもなりにくい。
 色以外にも、壁に「過去にランナーが使った形跡」を示すような足跡があり、そこを使って登ることが可能であることがわかるようにしてある。世界観を崩さず、こういった導き方を提示できるのは素晴らしい

困ったら赤いオブジェクトを探そう

壁に残された足跡から、登れる場所なのだと推察できる

 収集要素に対してもしっかりとサポート体制ができており、全体の収集状況とは別に、各地域やメインミッションでの収集状況も細かく記載されており、どこで何を取り逃しているのかが明確にわかるようになっている。クリアしたミッションはいつでもやり直すことができるが、アイテムを取得したらミッションの最後までプレイする必要があるので、途中でやめないようにしよう。
 それでも、残念な点がある。メインミッションでの収集状況に誤りが1つだけある。全部集める人は注意をしよう。そのミッションでは、手に入るアイテムが「3つ」だが、表示上は「2つ」となっている。なぜ、こんなことに。アップデートとかで簡単には直せないものなのだろうか。

クリア時間も書いてあるよ

スタリッシュなグラフィックとUI

 アートディレクター・Jhony Ljungstedt氏によって描かれた大都市には違和感がなく、本当に実現しそうなレベルにまで作り込まれている。様々なアイテムも自然と配置され、不自然なものは少ない。配色や各地区の治安を示すような入り組み具合や景観が非常に素晴らしい。Jhony Ljungstedt氏は『Battle Field Ⅴ』や『Medal of Honor』を手掛け、現在は『メトロイドプライム4』に携わっているとの噂があり、こちらにも期待が高まる。

裕福層が住んでいる雰囲気しかない

忍び込んだサーバーの内部で見上げた状態

 ゲーム中のUIも洗練されており、非常にスタイリッシュで使い勝手も良い。配色は白と赤を基調としており、シンプルながらも見やすさとカッコよさが両立されている。近年稀に見る美しさのUIだろう。

見惚れてしまう美しさ

ゲームの粋を超えた、こだわりが光る音

 ゲーム中に聞こえる足音フェイスの息遣いなどの効果音の質が高い。私はずっとイヤホンでプレイしていたからかもしれないが、「音」に対するこだわりが随所に見受けられた。ビルから地上へ落下してしまった際の風を切る音荒くなるフェイスの息遣いといった演出も非常に効果的で良い。「一人称視点」と「効果音」の合わせ技による没入感は凄まじい
 音楽は前作と同じくSolar Fields氏。エレクトロミュージックを得意とし、ゲームに楽曲を提供しているのは『ミラーズエッジ』のみ。前作のタイトル画面で流れる『Introduction』は未だに聴くくらいお気に入りだ。
 本作はオープンワールドの性質があるため、BGMは自然とフェードイン、フェードアウトされることが多く、そこまで深く印象に残るものは少ない。1曲1曲のクオリティは高く、1曲で10分を超える曲も少なくない。全てを聴こうとすると大ボリュームだ。『The Shard』は24分以上となる曲だが、かなりカッコイイ。個人的にはメインテーマとなる『Catalyst』や切なさのある『Isabel』が良かった。

イヤホンをしながらのプレイを推奨する。 

メインストーリーだけクリアするだけだと、短時間で攻略可能

 メインストーリーは細かく分割されたミッションをクリアする形式になっている。1つ1つは10分〜15分程度でクリアでき、サクサクと進めることができるメインストーリーをある程度進めないとできないアクションもいくつかあるため、優先して進めると良い。とりあえずメインストーリーをやってみて、気に入ったらサブミッションを進めるやり方をおすすめする。

単調なミッションの繰り返し

 基本的にやることはどのミッションも同じ。メインストーリーは赤くマークされたルートを通っていけば比較的簡単にクリアできるし、サイドミッションは「敵の陽動をする」か「指定された地点まで荷物を運ぶ」というものばかり。同じような道を走り、同じようなミッションを繰り返すことに飽きてしまうプレイヤーも少なくはないだろう。移動時の「パルクールアクション」に魅力を感じていなければ、面白みはかなり少ないと思う。意外とその繰り返しが後々役に立つこともあるのだが、やり込まない限りは無用の長物だ。

デジャブの嵐

広いマップの移動手段はほとんど「自分の足」

 かなり広いマップだが、その中を移動するには多くの場合「」を使う。つまり、自分で走っていくしかない。各所に「セーフハウス」があり、条件を満たせばどこからでも「セーフハウス」までファストトラベルが可能となっているが、そこから目的地まで距離があることも多く、移動はそこまで楽にならない「パルクール」を題材にしているのだから移動を楽しめ、と言われると確かにそうなのだが、もう少し、こう、ね……?

とにかく走る

監視が行き届きすぎているガラスの街

 終盤、敵との戦闘が激化していくのだが、メインストーリー以外の自由時間でも戦闘が増えていく。アイテムを収集している最中や物を運ぶミッション中でも敵兵はランダムで配置され、見つけ次第攻撃を開始してくる。それ以外にも街中に仕掛けられた監視カメラに一定時間認識されると通報され、敵兵を呼び出されてしまう。もう少し敵兵の配置の頻度の低下や回避方法が多かったら嬉しかった。
 戦闘自体はそこまで時間がかかるものではないが、回数が多いと単純に面倒になってくる。戦闘が終わっても警戒態勢が解かれるまではファストトラベルもできないため、最終的には一回死んで、状況をリセットしてしまった方が早いという判断に行き着くことになる。

サービスに面白い死に方はしてくれる

時間設定したやつ出てこい! シビアすぎる制限時間

 物を届ける「デリバリー」や敵を陽動する「デバージョン」といったミッションが用意されているが、どれも制限時間以内に指定された場所まで行かないといけない。基本的には赤くマークされた道筋を最速で行けば間に合うのだが、余裕はあまりない。だが、コイツらはまだマシな方だ。問題は「ダッシュ」。
 「ダッシュ」は同様に指定された場所に行くミッションだが、ゴールした時間によって★0〜★3の4段階で評価される、いわゆるタイムアタックだ。この★3評価を取得するための時間設定が鬼畜すぎる。まず指示されたルートの通りでは100%間に合わない。独自に最短ルートを構築しないといけない。また、少しのミスも許されないため、そこからさらに操作の精度を高めることが必要となる。
 時間設定の厳しさは前作からあったことではあるが、ここまで変わらないのは懐かしさや嬉しさがあり、憎しみの感情も思い出しました。前作はステージ中の仕掛けを読み込む時間が長いため、該当箇所でスタートボタンを押してタイマーを止めている間にPS3本体の駆動音から読み込み完了を察知したら先に進む、というトリッキーな攻略法がありましたが、本作では流石にそのレベルはなかったですね。
 ただ、現在はYoutubeで★3取得時の動画が結構あるので、その通りに走ればそこまで難しくはない。トロフィー獲得のためには全ての「ダッシュ」で★3を取得しないといけないので、頑張ろう。

ダッシュでは赤いマーカーを信じない心を持とう

若干長めなロード時間

 4年前の作品ですし、わざわざ取り上げるのも……とは思いますが、本当に若干長い。落下死してしまうことは割と頻繁にあり、そのたびに若干長いロード時間が若干ストレスになる。本当に若干長いんです。

長くもなく短くもない、若干長いローディング

好みが分かれるが、刺さる人にはぶっ刺さる最高のアクションゲーム

 前作の『ミラーズエッジ』から大好きだったゲームだが、本作はさらにパワーアップしたアクションや演出で面白みが上がっていて、純粋にプレイしてよかったと思える作品でした。シナリオ自体はそこまでスッキリとするものではないので、その点は好き嫌いが激しく分かれると思う。次回作があれば、またぜひともプレイしたい。『ミラーズエッジVR』……なんてね。
 収集要素やダッシュの攻略もすべてYoutubeに丁寧な動画がアップロードされているので、困ることも少ないのがありがたい。ありがとう文明。
 PS4版はセールで500円以下で買えたり、サブスクリプションサービスのEA Playにも本作が含まれているので、気軽に触ってもらいたい。

日本っぽい要素もちょこちょこある

 それでは。

 おわり。

効率よくプレイすれば1週間もあればコンプリートできるはず

P.S.『ミラーズエッジ』だけじゃない、新しいパルクールアクションゲームたち

 パルクールができるアクションゲームというのは現在でも増えていますが、ここではそのほんの一部を取り上げさせていただきます。
 『Ghostrunner』はサイバーパンクな世界観を持ったアクションゲーム。巨大建造物「ダーマタワー」を登り、頂上にいる支配者を倒しに行くという内容になっている。非常にスタイリッシュで、魅力的なゲームだ。SteamXboxOneでは既に発売しており、NintendoSwitchPS4版は2021年1月28日発売予定となっている。うーん、やってみたい。

 『STORROR PARKOUR PRO OFFICIAL GAME』は2020年12月に制作発表されたばかりの新作。プロのパルクール集団「STORROR」が手掛け、プレイヤーはそのメンバーを操作してミッションやタイムトライアルなどに挑むようだ。「パルクールそのものをテーマ」とした作品で、かなり意欲的なタイトルになっている。発売は2022年3月予定なので完成はまだまだ先だが、プレイできるようになるのが待ち遠しい一本だ。

あなたが私をサポートすると、私はあなたからサポートされることができます。