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世界一残酷な絵本作家エドワード・ゴーリーの絵から伝わる魅力。渋谷区立松濤美術館

皆さん、こんにちは。
アーティストのノブです。

今回は先日行った『エドワード・ゴーリーを巡る旅』展について話したいと思います。
正直僕はこの作家を知りませんでしたが、表紙の絵を見て面白そうだと思って行ってみたら、すごく面白い展覧会でした。

ですので、すごくおススメしたいと思ってブログを書いています。

まずエドワード・ゴーリーさんとは何者なのか?
簡単に説明しますと、絵本作家で幻想的で緻密な絵と残酷なストーリーが魅力の作家さんです。
しかし、2000年75歳という年齢で残念ながらこの世を去っています。

僕自身、ペン画を描く人間なので絵の雰囲気と発見があればいいなという期待も含め、行きました。
そして、行ってみてなぜエドワード・ゴーリーが人気なのか?
僕なりに捉えた魅力を発表したいと思います。

1.彼の描くキャラは全員アホっぽい。

顔の形や表情も含め、漫画っぽく、アンバランスな体形をしているし、たまにおかしな姿勢をしているシーンもあります。ですが、それが可愛らしくもあり、魅力的にもなっているのです。

2.シンプルな構図で情報がわかりやすい。

全てではないけれどシンプルで必要最低限のものを描いている印象があります。これだけの技術があるとやはり自我もあって描きこみたくなる気持ちにもなるでしょうが、そんなことはしていません。
ですから、見ていても混乱せずにシンプルに捉えることができるのです。
なので鑑賞者にとって心地よい感覚を得ることができます。

3.キャラと残酷なストーリーの組み合わせが抜群。

彼は『世界一残酷な絵本作家』としても有名だそうです。そのくらい彼の絵本は残酷なストーリーばかり。子供が痛い目にあうものだったり、イギリスで実際に起こった子供が残虐な方法で殺された「ムーアズ殺人事件」がモデルとなった絵本もあるのです。
暗く、残酷なストーリですから楽しいストーリーよりも受け入れがたいものであることは間違いありません。しかし、それでも世界中に受け入れられたのはその絵本に描かれる"バカっぽくて可愛らしいキャラがいるから"です。
これがリアルな絵だったら嫌悪感が強くなり、受け入れる人も少なかったと思います。出てくるキャラ達によって残酷さは和らぎ、絶妙なバランスで受け入れやすくなったのではないでしょうか?

4.『狂瀾怒濤: あるいは、ブラックドール騒動』の"意味不明力"

最後に個人的に一番強く惹き付けられたのは、『狂瀾怒濤: あるいは、ブラックドール騒動』という絵本の魅力を紹介します。

この絵本の中には4体のキャラしか出てきません。それが人なのか、動物なのか?匹、体なのかそういう単位もわからない謎の生命体です。
しかし、目や鼻などもなく表情も読み取れない謎の生命体が絵本の中で動いている様はこれまたバカっぽくて可愛らしい。
解説ではどうやらこの4人はそれぞれにイタズラを仕掛けたり、時にはご飯を一緒に食べているらしく、仲がいいのか悪いかもわからないのもまた魅力的です。
そして、彼らの周りには謎の黒い指の一部があったり、壁っぽいところは空にも見え、彼らがどこにいるのかもわからない錯覚に陥ります。
表情も読み取れず、動きや周りの環境で判断せざるを得ないのですが、遊んでいるのか、喧嘩をしているのか、儀式を行っているのか、何もわからない"意味不明な世界"をずっと見せつけられるのです。

それでもその絵に惹きつけられてしまいます。

そこがすごく不思議に思えました。
本来ならば意味不明なことを目の前にしたら人は嫌悪感に陥ります。
例えば芸人が意味不明なことをしたら滑るし、意味不明な映画やドラマを見せられたら不快に思うはずです。
しかし、この絵本はそれとは真逆でどんどん吸い込まれていきます。

なぜ意味不明な世界を見たくなる?

なぜそこまで意味不明な世界に僕は魅了されたのか?

ただ僕たちがこの絵本を見てわかることが一つだけあります。
それはこの世界の彼らは彼らなりに"意味をもって生きている"ということです。
彼らは当たり前のように堂々と行動しているのです。
それがわかると意味不明の魅力もわかるようになります。
それはあくまで僕たちがそれに対して意味不明なのは"意味が理解できていないだけ"になるからです。
もっと言い換えると"文化の違い"とも言えます。
私たちが生きている世界でも意味不明なことはたくさんあります。
例えばアフリカ民族の儀式や生活習慣を見ても僕たちは理解できないことはたくさんあります。
もっと身近に言えば、犬や猫を食べる国を僕たちは理解できません。逆に僕たちが豚を食べている生活を理解できない国もあるのです。
ですからエドワード・ゴーリーが作った意味不明な世界はただ単にその世界に流れる"文化の違いだけ"とも言えます。

ですから彼ら4人から流れてくる"意味のある堂々とした世界観"に強く惹き付けられるし、それを理解しようと惹きつけられるのだと思います。

この展覧会にはエドワード・ゴーリーの原画がたくさん展示されています。
そこには修正液で消した痕や切った紙を上から貼って編集された、作る過程を感じることができます。

ぜひとも澁谷の渋谷区立松濤美術館であとわずかですが、2023年6月11日まで開催されていますので足を運んでみてください。
今日は最後までご拝読ありがとうございました。






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