いろいろ失くしてしまったとしたら、そのときに私を好きになってくれたらいい

おじいさんになったらまた来るね。別れ際にそういったことが何度もあった。二人きりで目をつぶっている時間だけはとても上手くいく。

肌への触れかたにあらわれる私のあり方、それが彼らの存在を肯定する、私の存在も肯定する。私は分かっているけれど、彼らは戸惑う。学校、仕事、将来といったものと私と一緒にいることのつじつまが合わせられない。いままで積み上げてきたものがあるから仕方がない。

存在を知った、出会った、肌に触れた記憶がある。「あった」と「ある」の区別がない。世界にその存在があると示された、その事実が重い。私にはそれで十分な値打ちがある。

私はあなたが「ある」ことだけで満足してしまっている。あなたは一緒に冒険する仲間が欲しい。私は行かない。


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