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事業ポートフォリオ(2)

PPMの限界から続く次の経営理論について、いまは文庫で新装版が出ている「経営革命大全」にも書かれている。

一時期はコンサル系の関連会社にも在籍していたので、その時にプロジェクトの合間にPPMだけでなく、マイケル・ポーターやフィリップ・コトラーの部厚い本も貪るように読んでいた。

一方、「経営革命大全」の中で、ポーターは「BCGの成長率/市場占有率マトリックス」には多くの欠点があり、あまりに単純化しすぎている。もっと現実的な大人の競争戦略に取り組む必要があると考えて、出てきたのがポーターの3つの基本戦略であると言っている。

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事業や製品が置かれた市場(マーケット)だけで企業の戦略が決まるのではなく、競争優位の源泉(コストor独自性)と戦略ターゲット(全領域or特定分野)の掛け算で決まってくると大胆に競争戦略のタイプを提示した。

ところがこの本では、さらにこの次にポーターの競争戦略だけでなく、当時の戦略計画そのものの有効性を批判してきたのが、前出のヘンリー・ミンツバーグ教授だ。

そして米国は90年代に入ると、戦略を棚上げしてダウンサイジングやリストラクチャリング、リエンジニアリングに走り、短期で即効性のある収益改善を図った。80年代にはジャパン・アズ・ナンバーワンと騒がれたが、米国製造業が品質・コスト面で窮地に晒されただけでなく、さらに空洞化・衰退が進んだ要因とも言われている。

そして、次に現れたのが、ゲリー・ハメルとC.K.プラハラードによる「コア・コンピタンス経営」である。

ここに至って、経営学もSCP(ストラクチャー・コンダクト・パフォーマンス)理論全盛からRBV(リソース・ベースド・ビュー)理論に移っていく訳だ。

実務の世界では?

この頃、私自身もまだ30歳前後で、事業企画部門やコンサルティング部門にいたことで、多くの戦略フレームワークを学び、若手メンバーの一人として戦略計画書・中長期事業計画の元ネタ作りに励んでいた。

市場環境分析、自社事業分析を外資系コンサルティング会社やMBA帰りのメンバーと一緒に喧々諤々、汗水垂らして報告書に落とし込んでいくのは、自分の頭も冴えてくるような気がして本当に楽しかったが、事業計画の最後は結局は「数字」なのだ。

いくら綺麗なグラフで分析をしても、これだ!という戦略ストーリーを作っても、幹部からすれば「ほぉー、っで、なんぼ儲かるの?」「これやるのに、いったいいくらで、何人くらい必要なの?」とっ。

当然、鉛筆舐めなめでシミュレーションはしているが、所詮は様々な前提条件ありの将来計画値
こうなってくると、経年の財務数値、費用分析に強い財務部門からもいろいろな異論が出てくる。さらに保守的で変化を嫌い、下手なリスクを負いたくない事業現場からも異論が出る。こうなってくると企業の戦略部門は板挟みだ。

戦略=実行=数値をどうつなぎ合わせ、関係者全員が納得するような事業の方向性を導き出せるかが実務の世界では本当に重要だ。
具体的な戦略シナリオなしに全事業一律に売上成長、利益率向上では計画の意味がないし、それぞれの競争環境を考えれば、まったく現実的ではない。そこに、いまでも事業ポートフォリオ明確化の必要性と重要性があると考えている。


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