事業ポートフォリオ(4)
成長率と利益率の簡易なポートフォリオ分析をGAFAを中心としたネット企業大手に当てはめてみると、どんなことが言えるだろうか。
週末にGAFA+Microsoft、Twitterの2013~2018の売上成長率(CAGR)と平均営業利益率、そして2018年度の売上高でバブルチャートを作ってみた。
「花形」事業には、巨大なITプラットフォーマーとして世界に君臨するGoogle, iPhoneを中心にクールな製品群で魅了するApple、ソフトウェアパッケージ会社からクラウド事業者へと見事な変身を遂げたMicrosoft、そして成長率・利益率ともにGAFAの中でずば抜けているFacebookが位置付けられる。
一方の「問題児」にはここ2~3年はようやく黒字化したのだが、2020年第1四半期はまた赤字に転落したTwitter社。依然としてEC, サブスクリプション(Video, Music等)、AWSなど貪欲に売上拡大を図っているものの利益率向上には興味がないAmazonが位置づけられる。
まず始めに気づくのは、ネット大手には成長率マイナス、つまり「負け犬」だけでなく「金のなる木」(成熟事業)と位置づけられる企業はいないということだ。各社の個別事業を細かく見ていけば、マイクロソフトの売り切り型パッケージ製品(旧来のOffice製品等)がマイナス成長になっているかと思われるが、彼らはその潤沢な資金をクラウドビジネス、ソフトウェアもサブスクリプションモデル(Office365)に重点投資・シフトすることで、見事に成長企業へと復活を遂げている。
また、同じ花形事業でも多くの関連事業に触手を伸ばし、巨大化したGoogleやApple、Microsoftに比べて、いまもSNSによる広告モデルが中心のFacebookの成長率・利益率は驚異的だ。ただ、彼らも今後、さらなる成長のためにSNS以外の事業領域を拡大していくと思われるが、その場合、売上高は大きくなるものの成長率や利益率は他の3社並みに落ち着いてくるかもしれない。
たとえば、このGAMの3社とも自動運転にかなりの投資をしてきたが、テスラを追い越すようには思えないし、トヨタやドイツ車も独自の路線を歩み始めているようだ。また、GoogleやMicrosoftはAppleを夢見て、PCやスマートフォンのハードウェア事業にも参入したりしているが、参入時には業界に衝撃が走ったかが、結局、業界構造にインパクトを与えるほどではない。やはり、ハードウェア事業にはソフトウェア・ネイティブな企業のコアコンピタンスとは異なる事業能力が必要なのだろう。
一方で異彩を放つのはAmazonだ。ECやAWSが目立つのでネット企業に分類されるが、いまでは巨大な物流施設を自前で構築し、社員数も全世界で84万人と自社工場を持つ製造業に近い数値だ。毎年巨額の投資をしてサービス向上・事業領域拡大には貪欲だが、利益率向上には興味がないようにも思えるが、一方でネット注文の卸売業を中核事業と見なせば、今後も高収益化は望めないかもしれない。また、Amazon Goでリアル店舗に向けて実証実験を行っているが、本格的な店舗運営となると、どこまで事業を伸ばせるか?それが収益化できるか?は未知数だ。
そして、最後にTwitter社だ。いまもユーザ数、それに伴い広告収入+αの売上高を伸ばしてくるが、収益化には苦労しているようだ。Facebookと似たビジネスモデルなのにこの差は意外な感じがする。一方で、SNSの世界は日本でも、mixiやGREEはゲーム会社に、Amebaもブログから動画放送へと軸足を移している。栄枯盛衰が激しい業界なので、今後に注視していきたい。
さて、こうして見てくると、個社の成長率・利益率といった「数字」とともにそれぞれの事業の特徴や強み(勝ちパターン)も、一緒に議論できるようになる。コアコンピタンスという意味では、FacebookとTwitterは類似性が高そうだ。また、GoogleとMicrosoftは同じソフトウェアネイティブ企業として今後も真っ向勝負をしていきそうだ。
独自の立ち位置にいるのは、ハードとソフトを併せ持つAppleと、ECと物流機能を持つAmazonだろう。Appleは大手ソフトウェアベンダ(IBMやSAP)、自動車会社とも戦略的な提携を重ねているが、Amazonがどこかと提携したというのはあまり聞いたことがない。Googlezonの世界は今後も出現しないだろう。
事業ポートフォリオの話から、だいぶ脱線してしまったが、ポートフォリオ分析を眺めながら、その裏にある各社・各事業のビジネスモデル(儲けの構図)や戦略上の強み(コアコンピタンス)を紐解くことは、良い思考実験にもなると思うので、ぜひご自身でも試してもらいたい。
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