見出し画像

事業ポートフォリオ(1)

ある程度、事業規模が大きくなり、事業範囲が広がってくると「ポートフォリオ経営」が重要とよく言われるが、実務の世界ではどのように取り入れらているのか、また実際にはどんな所が課題や足かせになっているのだろうか?

今回から何回かにわたって、私の経験や考えてきたこと、日本企業での課題感について書いていきたい。

BCGのPPM

経営の世界で「ポートフォリオ」といえば、BCGのプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)が真っ先に誰の口からも出るほど有名だ。

BCGに対抗して、McKinseyも「GE・マッキンゼースクリーン」で9象限のマトリックスを出してきたり、それ以前には「市場と製品」を「新規と既存」に分けたアンゾフのマトリックスもあるが、ここでは、まず始めにPPMを軸に話を進めたい。

PPMの具体的な内容や限界については、GlOBISの知見録に荒木さんという方が詳しく書かれているので、ぜひ、そちらを読んで頂きたい。

画像2

私も20数年前にコンサルティング会社の方に指導してもらいながら、自社事業・サービスのPPMを作ったことがある。このサイトの限界のところにも書かれているが、数多くの異なる製品・サービスでマーケットシェアや市場成長率を調べて設定するのは本当に大変だった。セグメントの切り方によってどの象限に入るか大きく変わるし、市場成長率の都合の良いデータなど、いまのように多くの市場調査会社があった訳でもないので、実のところは鉛筆舐めなめの世界だった。

wikipedia にきちんと市場分析した結果であろうグラフ例が載っていたが、当時の私もEXCEL?でようやくそれらしいバブルチャートが出来上がったことに喜んだものだ。

画像1

ただ、この分析フレームワークは、あくまでも自社事業や製品・サービスをある側面から立体的に見た俯瞰図だ。これを使って、どう事業をドライブするか、その事業に人物金のリソースを積極的に投入するか(スター or 問題児)、成長より利益ベースを作ってもらう事業か(金のなる木)、それとも事業縮小・撤退か(負け犬)かを判断し、明確に意思決定して実行できるかどうかが重要なのだ。

ポートフォリオ経営の要諦

80年代以降、BCGやマッキンゼーの指導を仰いだ日本企業の多くが「ポートフォリオ経営」を標ぼうし、「選択と集中」を謳ってきたが、欧米企業に比べてスピード感も事業シフトの大胆さも不十分だったことは言うまでもないだろう。

祖業や先陣部隊への思いやり、リストラに対する労働規制、利益が出ていれば低成長・低収益でも許される風土などなど、さまざまな要因が考えられるが、一方で富士フィルムのように大胆に事業ポートフォリオを変化させた企業もあり、一概に日本企業だから。。。と言うのも一般論すぎるかもしれない。

私個人の意見としては、冷静な分析の下で事業シフトに対する切迫した危機感なり、あくなき成長への期待感があれば、日本企業の経営陣や幹部も馬鹿ではないので、実行できたはず。むしろ、現実の世界では鉛筆舐めなめ仮説を立てて何とかポートフォリオ分析が出来上がったとしても、結論と現実に誰が見ても違和感があり、トップを含めて幹部の納得が得られなかったことが多かったのではないだろうか。

スターと位置づけられたのに、実際の事業はまったく伸びていない。負け犬のはずなのに、そこそこ高い利益を出している。など、具体的にどこに「選択と集中」すべきか、どんなポートフォリオ分析ツールを使っても、グレーな部分が残るため、関係幹部全員が納得するようなはっきりとした結論や事業組み換えロジックを打ち出しにくいところに現実の悩ましさがある。

そうであれば、「ポートフォリオ経営」の要諦は、最後はトップや事業責任者の英断にかかっているとも言えよう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?