見出し画像

事業部制組織(1)

会社がある程度の規模になると、「事業部制」を敷いているところが多い。大手企業では「事業部」があることがもはや当たり前のようになっているが、そもそも事業部制とは何を志向していて、どんなメリット・デメリットがあるのか少し深く考えてみたことはあるだろうか?

少し前の週刊東洋経済のサイトに京都大学の先生が「社長と事業部長とでは実は利害が一致していない」ことをご専門のゲーム理論をベースに書かれていたが、「そんなことはうちの会社には絶対にない」と思われるか、「そんなこと、当たり前だ」と思われるか、どちらだろうか? 

この話は日本企業が事業部制を導入した当初はよく言われた話なのだが、最近はあまり議論されずに忘れられているように思う。この記事は私に事業部制組織に対する重要ないくつかの論点を思い起こさせてくれた。

組織論の教科書(マクロ組織論)では、生産・販売・サービス等の機能別組織業務機能ごとに専門特化できるが、多種多様な製品やサービスを扱うようになると製品なりマーケットごとの個別戦略や戦術に対して、生産部門や営業部門の動きが鈍くなったり、融通が利かなくなったりしがちである。

一方、事業部制では生産方式や販売チャネルが似通った製品ごとに「生産・販売・サービス等」を一体化し、特定事業領域に特化した組織にすることで対象マーケットの動きに機動的に対応できるとされている。

英語で事業部は "Business Unit"と言われるように、ビジネス/マーケット/ビジネスモデルごとに特化・集約した組織単位が本来の姿だ。これはつまり、前回までに述べてきた事業ポートフォリオにおける分析単位、四象限に配置された大小の円の単位と本質的に同等、あるいは近しいものだ。

ところが、実際に日本企業各社が大きくなるにつれて、事業部制からさらに事業本部制、そしてカンパニー制や事業グループといった概念・組織構造が導入され、事業部制組織が本来持つべき機能・権限と責任・機動性といったものが企業の組織階層の中であいまいになっていないだろうか。

そこで次回以降、事業部制のメリットやデメリット、実務の世界で感じたことを書いていきたい。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?