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2024.5.18

毎月金曜日の隔週で入る夜勤現場は、一緒に組むバディのオッチャンがいい感じにラフで凄い楽しい現場。


「物価やべーな。こないだキャベツが1,000円だったぞ。世も末だな!ガハハ」

「『失われた30年』ですっけ?政治なんですかね、結局いまの生きづらさって」

「だわなぁ…まあ選挙なんて行ったことねえオレが云うのもアレだけど」

「ボク36歳だから、生まれた瞬間からほとんど失われてることになりますよ」

「ガハハ!そりゃテラくん政治家になるしかないな、ニッポンを変えろ!ってな」

「なんすかソレ(笑)」


何にもない朝の空。空気もまだ澄んでいる。


「いい国だったんだよ、むかしは」

「バブルとかの時代?」

「あーそうだそう、そう!」

「万札掲げてタクシー捕まえたりしたんですか?」

「そう!そうそう!…楽しかったなあ、あの頃」

「羨ましいなぁ」

当時の勢いのある日本を知っている世代の横顔は、まるで無垢な少年のようで、本当に羨ましいとさえ思った。

「煙草うめぇなぁ…」

「ですねぇ」

「そういえばテラくん、あのーアレ。小説!あれどうなった?」

「あぁ。いま最終回書いてますよ。なかなか筆が進みませんが…」

「そっかそっか!そりゃ大層なこった!」

「ふふ。俺はいまなんです」

「んあ?」

「"あの頃"なんて無いから、いまなんです」

「…そっか。そうだよな!ガハハ」


なんにもない空が、
何故だかいつもより近くに感じた。


出典元:https://youtu.be/Bp-TtXVpKkI?si=fpHs3wkNnDJpvDw_


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